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「ミリタリー・カルチャー研究」書評 実体験とサブカルをつなぐ意思

評者: 生井英考 / 朝⽇新聞掲載:2020年09月12日
ミリタリー・カルチャー研究 データで読む現代日本の戦争観 著者:吉田 純 出版社:青弓社 ジャンル:社会・文化

ISBN: 9784787234698
発売⽇: 2020/07/17
サイズ: 21cm/425p

2015〜2016年に実施した、軍事や安全保障問題についての意識や関心を尋ねたインターネット調査の回答データを分析。現代日本のミリタリー・カルチャーの全体的な構造を、社会…

ミリタリー・カルチャー研究 データで読む現代日本の戦争観 [編]吉田純、[著]ミリタリー・カルチャー研究会

 「ミリタリー・カルチャー」(軍事文化)とは、ふつう軍の組織風土(共通の発想やしきたり、価値観など)の総体をいう。例えば同じ米地上軍でも陸軍と海兵隊は異なる「文化」のもとで行動する、というふうに。
 対して本書は「市民の戦争観・平和観を中核とした、戦争や軍事組織に関連するさまざまな文化の総体」と定義する。戦争をめぐる人々の認識や「イメージ」を重視しているのだ。
 戦後の日本では空襲と原爆の記憶がくりかえし喚起される一方、少年週刊誌が盛り上げた戦記マンガやプラモデルのブームが、いまや高齢に達した「戦争を知らない世代」の心深くに棲みついてもいる。「宇宙戦艦ヤマト」と「機動戦士ガンダム」に始まる架空戦記への熱狂も、中年から若年層に広くまたがる。
 本書はこの「少年文化」に由来する「ホビーとしての『ミリタリー』」を日本の軍事文化に位置づけた社会学者らの共同研究。欧米流の軍事文化論と一線を画す日本論ともいえよう。
 念のため付言すると本書は「ミリオタ」論のたぐいではない。延べ1600余の回答者に戦争関連の知識や文学、映画、アニメ、ゲーム、グッズ、戦争責任、沖縄、旧軍と自衛隊の関係などを尋ね、データで探った戦争観・軍隊観の報告だ。
 日本には戦友会や戦争体験の社会学的研究の豊富な蓄積がある一方、オタクなどのサブカルチャー研究は別次元をなし、双方の連携は個人の域に限られてきた。本書にはそこをつなぐ意思の堅実な表明がある。
 それゆえ細部に小さな発見が宿る。例えば自衛官の募集ポスターにアニメ少女ふうの「萌えキャラ」を使うのには男性の方が好意的。広報の現場にも「軍の威信を傷つける」式の発想はないという。そういえば本書は宮崎駿作品の影響に触れていない。兵器にくわしく、「戦う少女」を一躍ヒーローにした宮崎アニメの人気こそ、和製軍事文化の象徴だと思うのだが。
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 よしだ・じゅん 1959年生まれ。京都大教授。ミリタリー・カルチャー研究会は十数人の研究者と共に組織。