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草刈正雄さん「人生に必要な知恵はすべてホンから学んだ」インタビュー せりふと出会い、役を生きる

草刈正雄さん=永友ヒロミ撮影

 福岡の小倉から上京してモデルになって51年、CMデビューから50年の節目の夏、俳優人生をかたちづくってくれた名ぜりふとの出会いを振り返るこの本と、自伝「ありがとう!」(世界文化社)を出しました。

 半世紀。すごいですよねぇ。中学の頃は新聞配達を、定時制高校ではバイトのかたわら軟式野球部を続けましたが、頑張り屋というわけでは……。一つのことを始めると変えるのが面倒な、めんどくさがり屋なんです、多分。でも、44年前のNHK大河ドラマ「風と雲と虹と」でメイクをしてくれた人が「美の壺(つぼ)」でも担当だったりするのは、続けてきたからこそのうれしさですね。

 出会いに恵まれました。例えば市川崑監督は映画「病院坂の首縊(くびくく)りの家」で、僕のコメディアン志向を原作にない役で引き出してくれた。「真田丸」では三谷幸喜さんが記憶に残るせりふをいくつも書いてくれた。

 演技プランは立てないんです。現場で瞬間、瞬間を生きるだけ。ヒントは台本(ホン)の中に既に入っていますから。せりふは細胞にひっついたと思えるまで口に出す。テニスの試合をしながらとか、他のことに集中しててもスムーズに出てくるまで。

 原点は、母がよく連れて行ってくれた小倉の映画館。中村錦之助(後の萬屋錦之介)さんや大川橋蔵さん、おもしろい俳優さんがいっぱいいた。当時の映画館は、下が凸凹の土だったり、七輪で魚を焼く人がいたり。

 「無法松の一生」にも松五郎が芝居小屋で七輪を焚(た)く場面がありましたっけ。世界屈指のラブストーリー。しびれます。あんな役もやってみたい。本場の言葉もしゃべれるし。でも自分からやりたい役よりも、「こういう役を草刈にやらせたい」、そんな出会いが楽しみです。(構成・藤崎昭子 写真・永友ヒロミ)=朝日新聞2020年9月16日掲載

草刈正雄さんのサイン