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「しっぽの声」で知る、動物を保護するお仕事 アニマルシェルターの役割とは

文:佐藤直子

 ペットショップで売れ残った犬や猫がどこへ行くのか、考えたことがありますか? 『しっぽの声』(作画・ちくやまきよし、協力・杉本彩、小学館)は『獣医ドリトル』の夏緑が原作を担当した、ペット流通の闇にスポットライトをあてた漫画。シェルター運営者と獣医、それぞれの視点からペットの命がどう扱われているか伝えます。

 動物の匂いや鳴き声がすると住民からの訴えを聞き、動物愛護団体のスタッフと調査に訪れた獣医師・獅子神太一。入室を拒否する家主との交渉を続ける獅子神の前に、動物を救出しようと不法侵入を試みるアニマルシェルターの所長・天原士狼が現れます。

 「法を犯している!」と反論しながらも、家に乗り込む天原の後に続くと、そこには糞尿や食べ物が腐敗したにおいが。家の中は散らかり放題、数匹の弱った犬、空腹のために共食いされた子犬の死体まで……。多くのペットを飼っていながら十分なエサを与えられず、掃除もされていない飼育放棄の悲惨な現実を目にします。2人は手分けをして、救命の現場でも使われる「トリアージ」という色分け方法によって優先順位を決め、治療していきます。

©夏緑・ちくやまきよし/小学館 「ビッグコミックオリジナル」連載中

 アニマルシェルターは飼育放棄された犬や猫を保護し、里親を探す施設です。所長の天原は一緒に住む動物好きの幼稚園児・希音と、広大な敷地の中で保護された動物の面倒をみています。ビーグル犬のパタは、シェルターに保護されたうちの一匹。保護された時は、吠えて噛みつき、検査も治療が困難なほど凶暴でした。しかし、希音を中心にエサやりや掃除など日々の世話を通じてコミュニケーションを取るうちに、次第に心を開くように。このように手間と時間をかけて保護動物との信頼を築き、家庭に馴染むように訓練します。

 天原は保護された動物と新しい家族との出会いを作るため、譲渡会も行います。里親に引き渡す際、けがの治療、不妊、去勢手術、ワクチン接種などは欠かせません。アニマルシェルターに保護される動物を専門的に治療する獅子神を巻き込み、一匹ずつ健康状態を把握していきます。

 疾患や障がいなどの理由で譲渡が困難な場合、寿命まで適切な飼育を行い、さらに感染症にかかっている動物の殺傷処分を判断します。シェルターにたどり着くペットは、このような対応を受けることができますが、ペットショップで販売される犬や猫は、成長すればするほど売れ残りの対象になりやすく、値引きされ、最終的には野菜などと同じように余剰在庫として廃棄される運命をたどるものもーー。お金で彼らを引き取る「引き取り屋」もいて、子どもを産めるだけ産ませ、「あとは死のうがおかまいなし」という地獄も存在してるのです。

©夏緑・ちくやまきよし/小学館 「ビッグコミックオリジナル」連載中

 天原と獅子神の初対面の印象はサイアクでした。生と死、命の選択について迫られるたびに2人はぶつかり、まるで水と油のよう。子猫や子犬を増やすことが目的の通称、「繁殖工場」で交配を強いられた猫はエサもほとんど食べられないほど弱っていました。死に至る病気であることから、安楽死させてあげたいと思う天原と、生きるための治療を探したいという獅子神。立場と性格、いずれも全く違う二人ですが、動物の命を守りたいという目的は共通しています。

「しっぽの声」で知る、動物保護あるある!?

  • 成長すると30キロほどの大型になり、1時間以上の散歩が1日2回以上必要などの理由から、高齢の人には勧められない犬種がある
  • 大人の小型犬は、保護されるまでの成育歴が不明な場合が多いため、病気や育ってた環境をできる限り調べて飼育にのぞむ
  • ものをため込むことを英語でホーダーということから、動物を飼いきれなくなって飼育崩壊した人を「アニマルホーダー」と呼ぶ
  • アニマルシェルターに保護された動物たちに特化した専門医学のことを「シェルター・メディシン」という。病理学以外にも栄養学、心理学、衛生学などを学び、保護に生かす
  • 「飼い続けられなくなったから」と勝手な都合で施設前に動物を放置する飼い主がいることから、里親の見学以外は住所を積極的に公開していないシェルターもある
  • 譲渡会で気に入った犬や猫がいたら、誰でも飼えるというわけでなく、虐待目的の譲渡防止や飼育環境の確認のため、家庭訪問がある。家族とのライフスタイルとの相性の確認もあり、数日~1カ月のトライアル期間を設けている場合がある
  • 譲渡会で純血種や人気のある犬種や猫をタダ同然で仕入れて、高額で転売する輩もいる。