土日に休めない家電量販店勤務の夫と不定休の看護師の妻。めったに休みが合わないからこそ、たまに同時に休める日は全力で遊びまくるのが夫婦のルールとなった。
……と、そこまでならば珍しくもない話。問題は、その「全力」の方向性だ。日帰りで行ける最遠のショッピングモールをめざし、土砂降りの日にあえて屋外施設でずぶ濡(ぬ)れになり、元日に休めなかった分を〈ジェネリック正月〉と称して普通の日の出を初日の出として鑑賞、神社を何軒も回って大吉から大凶までおみくじの全運勢をコンプリートする。それはもはや遊びというより苦行に近い。
それでも、2人はいつも楽しそうだ。企画立案は夫の役割だが、無茶(むちゃ)な計画にもノリノリの妻。その面白がる才能に惚(ほ)れ直す夫。平日に「フェスに行きたい」との妻の要望に暴投気味の企画で応えたエピソードなどは、究極の夫婦愛としてうっかり感動してしまいそうなほどである。
もちろん実際に企画立案しているのは作者であり、その発想力には脱帽。「20時間カラオケ」なんて動きのない状況をマンガとして成立させる技もすごい。この“面白がり精神”があれば、人生は何倍も楽しくなるに違いない。=朝日新聞2021年3月6日掲載