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「漫画家しながらツアーナースしています。」で知る、ツアーナースのお仕事 数日間全力で、子どもの健康と思い出を守る

文:片岡まえ

 『漫画家しながらツアーナースしています。』(明、集英社)は、著者で自らもツアーナースである明さんが主人公のコミックエッセー。小中学校の修学旅行や林間学校、塾の合宿などに同伴する看護師の仕事をハートフルに描いています。宿泊行事中の3~4日間、数百人の生徒と一緒に過ごし、ケガや病気の対応を行って、子どもたちが安心して参加できるように先生たちと協力しながらサポートするのが仕事です。

©️明/集英社

 ツアーナースの仕事は出発前から始まっています。学校に出向き、宿泊行事中のスケジュールと生徒の健康状態を把握する打ち合わせを行います。スケジュール確認とは、山登りなどのレクリエーション中に熱中症が起きないか、水分補給が考えられているかなど健康に影響が出そうな点について確認、対策を提案します。アトピー、ぜんそく、てんかん、心臓病、最近ではアレルギーや発達障害など子どもの疾患や薬の種類は様々。注意点や薬を飲むタイミングなどをひとつずつ、先生と確認していきます。

 持病のある子どものケアは特に慎重です。ツアーナースの大事な仕事のひとつが薬の管理。子どもたちが忘れずに薬を飲むように声を掛け、食べ合わせ、飲み合わせで薬の効きが悪くなることもあるので、細心の注意が必要です。

 しかし、予防や対策を十分にしていても、予期せぬことは起きてしまうもの。グレープフルーツを食べると薬の効果が強くなり、体に影響が出てしまう心臓病の子どもに、登山の途中でグレープフルーツ味の飴が配られた可能性が……。明さんは山の中を全力疾走して子どものもとへ。結果、事なきを得ましたが、この経験から口に入れる可能性のあるものは全てチェックしているのだそうです。

©️明/集英社

 このようにツアーナースは突然のケガや体調不良に備えていますが、時々、病気とはちょっと違う症状が出現する子も。その正体はホームシック。この年代は、人として成長する途中の段階。行事を楽しみにしていた反面、夜になって急に不安になったり、親元を離れいつもと違う環境になじめず、体調を崩してしまったりするのはよくあることだといいます。

 ホームシックから体調を崩し、キャンプファイヤーを断念して残念がる子どものために、明さんは先生や子どもたちと協力し、ひと肌ぬぐことに。思春期の子どもにとって、新しい経験は成長できる貴重な機会であり、仲間との関わりがアイディンテイティの形成を促します。

 一緒にいるのはたったの3日。どんなに濃厚な数日を過ごしても、その後の彼らを知る由もありません。しかし子どもの数だけ個性があり、どんな子も自分なりの成長を遂げる。それを全力で支えるのがツアーナースという仕事の醍醐味です。

「漫画家しながらツアーナースしています。」で知る、ツアーナースあるある?!

  • 数日間子どもを預けるナースとして安心してもらえるよう、第一印象をよくすることや笑顔はかなり意識している
  • 子どもたちの体温、食事、睡眠などその日の体調を知るヒントになる「健康カード」というものがある。感想が書かれたコメント欄を読むのが実は楽しみ
  • 宿泊行事の間、宿泊施設内に「保健室」が設けられる
  • 生徒だけでなく、先生も宿泊行事の疲れで、腰が痛い、足がつったなどの症状で「保健室」を訪れる
  • 意外と多いのが乗り物酔い。ツアーナースもバスに乗っている時に自分が酔うことも稀にあるが、不安にさせないよう笑顔は絶やさない
  • 学校のほか、塾、スポーツ合宿、時には海外に行く場合も。塾の合宿になると数千人が参加する場合もある