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深川直美「ネコロポリス計画定例集会」 「知っ得なっ得」のひねり、ここでも

 本紙土曜別刷り「be」連載「知っ得なっ得」コーナーのイラストをいつも楽しみにしている。テーマを咀嚼(そしゃく)し絶妙のひねりを加えたネタ、端正でリアルなのにギャグ味のある絵ヅラが微苦笑を誘う。

 そのイラストを手がける作家がマンガを描いた。毎回公園で3匹の猫が集会を開く場面から始まる。〈愚劣な人間どもを排斥しネコファースト社会の実現を目指す〉のがお決まりの議題。ああ、よくある擬人化猫マンガか……と思ったら大間違い。確かに彼らは人語を解し猫同士で会話するが、あくまでも狂言回し&ツッコミ役。真の主役は公園にやってくる人間たちだ。

 子育てお疲れママ、家に帰りたくないサラリーマン、行き詰まった就活生、結婚詐欺に遭いながら相手の男を忘れられない女、引きこもりの息子の相談に行って壺(つぼ)を売りつけられた夫婦……。そんな煩悩多き人間たちの生態を猫の目を通して描く。つまりは人間観察マンガなのだ。

 イラストで見せる絶妙のひねりやパロディーは本作でも健在。コマ割りやセリフ回しなど、マンガ表現の完成度も高い。もちろん猫のフォルムや表情、仕草(しぐさ)の描写も最高。ブサかわいい猫たちにも迷える人間たちにも幸あれ。=朝日新聞2021年5月1日掲載