まるで大河ドラマ/日高ショーコ「憂鬱な朝」
華族制度が残る明治時代を舞台に、若くして子爵家を継いだ久世暁人(あきひと)と美しく有能な家令の桂木智之の波乱に満ちた恋を描いた作品。1冊で完結するものが多いBLコミックですが、こちらは全8巻の長編BLです。
1巻を読んで続きが気になり、はじめてBLコミックを全巻大人買いしました。繊細で深い心理描写、ドラマチックなストーリー展開に「こんな重厚なBLがあったのか!」と、ただただ圧倒されました。イッキ読みをおすすめします。
SF+BL=KF(心ふるえる)/山中ヒコ「500年の営み」
事故死した恋人を追って自殺した山田寅雄が目覚めたのは250年後の世界。なんと冷凍保存されていたのです。世話係とし恋人に似せて作られたアンドロイドのヒカルBは優しく懸命に働いてくれるものの、亡くした恋人の3割減という残念な“品質”で……。
BLとSFが結びつくとは想像もしておらず、BLの多様な世界、作家さんらの創造力の奥深さを知るきっかけとなりました。寅雄がヒカルBに対して抱く複雑な感情描写に、愛するとは何かを考えさせられます。静かに心に響いてくる作品です。
人外浮世草子/こふで「べな」
BLの中でもオメガバースなどの特殊なジャンルは初心者にはハードルが高いと、しばらく敬遠していました。が、人ではないものを描いた人外はファンタジーとして楽しめる分、むしろ初心者にこそおすすめしたいジャンルだと教えてくれたのが、こちらの作品。
江戸を舞台に、孤独な鬼の子・べなと慰み者の美青年・壱が互いに傷つけ合いながらも幸せを育んでいきます。二人の恋物語であると同時に成長物語であるのも読みどころの一つです。
恋するのはボーイズだけじゃない!/カサイウカ「両想いなんて冗談じゃない!!」
BLとはボーイズラブの略だけに、若い男の子たちの恋愛が描かれているものだと思っていました。そんな私の勝手な先入観を取っ払ったのが本作です。
高校からの親友・芝隆次(ノンケ)に片想いし続けてきた神田時造、42歳。親友として支えられればいいと自分の気持ちを隠していたものの、ひょんなことから芝と同居することになり、二人の関係にも変化が訪れます。おじさん同士だからこその葛藤や可愛らしさに、切なくなったり、大笑いしたり。私の“おじさんBL”の扉をまさしく開いた一作です。
>>カサイウカ「両想いなんて冗談じゃない!!」紹介記事はこちら
おとぎ話のような世界/小石川あお「食べないの? おおかみさん。」
おおかみ男・ウルのもとに生け贄として差し出された太郎。ウルは痩せっぽちは美味しくないからと言い、太郎を大切に育てます。大きくなったら大好きなウルに美味しく食べられることを夢見る太郎ですが、ウルには別の考えがあるようで……。
「赤ずきんちゃん」や「ヘンゼルとグレーテル」を彷彿とさせる世界観に、精霊や人魚、一角獣も出てきて、とってもメルヘンなBLになっています。お互いを思う気持ちの純度の高さに心が洗われました。