小5のころから芸能活動を続けている。いつも「見られる」立場だったが、年を重ねてジェンダー意識が醸成されると「若い女性として見られる」ことにこんがらがった思いを抱くようになった。なぜ綺麗(きれい)になりたくて、どうしてそう思うようになったんだろう――。24歳から始めたウェブでの連載エッセーと読書録をもとに、一冊にまとめた。
20歳から6年間、テレビリポーターの仕事をしていた。当初は面白かったが、街行く人から台本通りのコメントを引き出さねばならないことに違和感を抱いた。「マスメディアで女子といえば、若い、明るい、元気、素直……。そんなイメージで自分も出ていました」。しかし、メディアが大量生産する「女子」とは一体、だれの中の女子像なのか。
もちろん番組では台本通りに。そして、ひとりになると本を開いた。『82年生まれ、キム・ジヨン』などの韓国フェミニズム小説のほか、藤野可織、今村夏子、松浦理英子ら既存の女性像ではない女性を描く作家の著作を読んだ。
「本は、他人の言葉を脱げる小さな部屋のようなものでした。私の不安やイライラを鎮めてくれ、私の手を引っ張ってくれました」
それでも、お金、仕事、結婚と20代のもやもやは尽きない。同居中のパートナーに結婚を打診したら、まずは自分の分の家賃(4万円)を毎月ちゃんと払えるようになった方がいいと思うと言われたり、全財産が253円しかなかったりしたことも。収入はいつも不安定。自作の短歌に思いがにじむ。
デニッシュを片手で食べて検索す「女性 アラサー 平均年収」
つるんとした肌に対抗するように体毛を育てた逸話や、「電線好き」ゆえ、街のうねうねした電線の魅力が差し挟まれた章も、印象的だ。(文・加来由子 写真・工藤隆太郎)=2021年7月17日掲載