タクシーに乗ったとき、
運転手からこんな話を聞いた。
その運転手はふだんは、とある企業の理事をしていて、
会社のプロジェクトの一環として、タクシーを運転しながら
客の悩みを聞く活動をしていると言う。
運転手は私に何か相談したいことはないかと聞いた。
どんな話をしたらいいかわからず、
私に話したいことはありますか、と
逆に質問をした。
運転手は、しばらく考えてから話を始めた。
生きていれば、誰にでも三度のチャンスが訪れる。
でもほとんどの人々は、
そのチャンスがジャンボ宝くじに当選するとか
特別な幸運に出会うとか
特別な人が自分に会いにくることだと考えている。
でも、それはチャンスじゃない。
すでに完成された幸運だ。
実際、人生においてそんな幸運は
たった一度巡ってくるかこないかだ。
人生に訪れる三度のチャンスはこういうものだ。
1つ目は、まるで反りが合わない人や
まったく自分に合っていない仕事を手放すチャンス。
この機会を逃してはならない。
これを逃したら、間違ったことにとらわれ続けて
人生をムダにしてしまう。
あまりにも自分に合わないことを続けていると、
経験だと見なすことすらできなくなる。
心が傷だらけになって、
新しいことに挑戦するために必要な勇気を
失ってしまうからだ。
2つ目は、自分を心から愛してくれる人を
もっと大切にしながら共に生きていくチャンス。
人は本当に奇妙だ。
いくら好きでも時が過ぎれば慣れてしまう。
それが大きな問題だ。
慣れのせいで感謝の気持ちと相手を大切に思う気持ちが消える。
そして、この世に2つとない相手の思いやりが、
どうでもいいもののように感じられる。
その状態が続くと、いろいろなことが気に食わなくなって、
相手に憎しみを感じ、愛が冷めていく。
その結果、大切な人を失って、
ひとりになってから後悔の念にさいなまれたり、
この先の人生において二度とそんな相手に出会えなくなったりするかもしれない。
もし今、家族や友だち、恋人など、
あなたを心から心配して、
あなたを心から愛してくれて、
あなたを心から大切に思い
あなたと一緒に過ごしたいという人がいるなら
あなたにはその気持ちを大切にして、
かけがえのない人を守るチャンスがあるんだ。
3つ目は、年がいくつであろうと、
今どんな状況に置かれていようと、
誰にでも必ずある、得意分野を見つけるチャンス。
私は会社に勤めながら、さまざまな人を見てきた。
それぞれに好みがあって気質もちがうが、
誰にでもうまくやれることが存在する。
仕事を辞めてそれを探せと言っているわけじゃない。
もちろん、自分が望むならそうしてもいいけれど、
大切なのは好きなことを見つけるのをあきらめない姿勢だ。
誰の人生にも、好きなことを探すチャンスがある。
そのチャンスを捨ててはならない。
好きなことはたいてい、
時間が経つにつれて得意なことになっていく。
そして、最後にもう1つ付け加えるとしたら、
自分を愛するチャンスだ。
生きていれば、どんな慰めの言葉も耳に入らず、
二度と立ち上がれそうにない困難が訪れることもある。
積み上げた砂の城を波がさらっていくように、
一瞬にして心が崩れることもある。
そのときにできるのは、
自分をもっと愛することだ。
あなたには、自分を愛するチャンスがあるということを
忘れないでほしい。
自分をもっと理解して
自分にもっと寛大になり
生きる速度が速すぎるときは立ち止まって
自分のためになることとは何なのか、
真剣に考えてみるといい。
・・・
話を聞いているうちに、いつのまにか目的地に到着していた。
降りるために私が荷物をまとめていると、
運転手は言った。
美しく咲く人よ
日々の小さな出来事に失望せずに
今日も明日も幸せに過ごせますように。
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