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石垣りん『石垣りん詩集 表札』 20年迷った末の石垣りん詩集

 『石垣りん詩集 表札』(1650円)が8月に童話屋から刊行された。「自分の住むところには/自分で表札を出すにかぎる。」で知られる詩「表札」を先頭に、家庭での苦悩や反戦を歌った29編が収められた。

 詩集や絵本を手がける童話屋は、1997年に「表札」の入った選詩集『空をかついで』を出版している。だが、過去に詩集『表札など』で使われていたこともあり、あえて書名にしなかった。

 童話屋の創業者で編集者の田中和雄さん(86)にはじくじたるものが残った。一番の傑作で「人間が生きていく上で名前がどれだけ大事かを教えてくれる」と評していたからだ。「表札」を冠した詩集を出すか20年迷い、自身の年齢を考え決心がついた。2004年の石垣さんの逝去まで10年ほど交友のあった田中さんは「『やっと出してもらえた』と石垣さんに喜んでもらえると思う」と話している。(川村貴大)=朝日新聞2021年9月18日掲載