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「もしも、東京」 漫画家20人が描くそれぞれの東京

 萩尾望都、松本大洋、山下和美、吉田戦車、市川春子ら漫画家20人がそれぞれに「東京」を描き下ろす企画展〈漫画「もしも東京」展〉(展覧会は9月に終了)の作品に、角田光代、ジェーン・スーら作家の寄稿を加えた作品集『もしも、東京』が刊行された。

 浅野いにおの短編には仮想空間として2020年ごろの東京が登場する。一見、恋人たちの物語に思えるが、連れていかれる世界の切なさにため息がこぼれる。想像力がかきたてられ、深い余韻が残る。

 1980年代の「夢をかなえる街」としての東京を描くのは太田垣康男。自身を投影した主人公は、渡辺美里「My Revolution」を録音したカセットテープを聴きながら大阪から上京する。松本大洋は、萩原朔太郎の詩「青猫」でうたわれる東京が好きといい、絵をつけている。スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫は、両親を別々に東京に呼び寄せた時の思い出を随想に。

 マスク姿が描かれた作品も複数あり、同時代性も刻印されたオールカラー作品集だ。(加来由子)=朝日新聞2021年10月16日掲載