2004年に文芸賞を同時受賞した白岩玄さん(『野ブタ。をプロデュース』)と山崎ナオコーラさん(『人のセックスを笑うな』)は、同期の作家として歩んできた。2児の親どうしでもある。『ミルクとコロナ』は、そんな2人が3年半にわたって続けた子育てをめぐる往復エッセーだ。
白岩さんは、子どもが生まれたとき「お母さんには敵(かな)わない」という言葉を使わないと決め、育児に奮闘する。一方、山崎さんは世間の男女の区別に違和感があり、自身と配偶者、子どもの性別を明かさずに日々の営みをつづる。互いの喜びや痛みを柔らかく受け止めながら進むエッセーは、いろんな規範の下で生きる読者の心を、きっと軽くしてくれる。
コロナ禍で、表現上の配慮がいっそう求められる時代に。「不謹慎なことも書くかもしれない。その覚悟を持とう」と山崎さんが呼びかけ、白岩さんが応じた。エッセンシャルワークとは。コミュニケーションとは。個人的な体験の吐露が、社会的な問題提起につながっている。(吉川一樹)=朝日新聞2021年12月4日掲載