大阪の友達と一年ぶりにビデオ通話でしゃべった。気がつけば3時間。なかなか大阪に帰れないので、文明の利器ありがとうである。前に某アイドルグループの話をしていたので、今もはまっているのか聞いてみた。すると「アイドル自体よりも、その熱心なファンの人たちを見てるのが好きなのがわかってきた」と言う。わかる。なにかがすごく好きな人、詳しい人が楽しんだり一生懸命話すのを見るのは、私も好きだ。「インターネットはそういうなにかに詳しい人がたくさんいるやん?」。うんうん。へえー、そこがいいんやなあ、って知るの、楽しいよね。
私自身は不器用で爪を塗ることはほぼないのだが、何年も見ているコスメ好きのアカウントがあり、その人はネイルカラーをベージュ系だけで30本以上持っている。微妙な質感や刷毛(はけ)の塗りやすさが違うようで、その解説を読んでいるだけで感心する。詳しくないとつい、全然別の色を集めるのかなと思いがちだが、近いけど絶妙な違いがあるものを揃(そろ)えているのがさすがである。先日は、中古レコードマニアの人のイベントに行った。CDで聴くのより断然臨場感があり音がすごく良い。私は「なんかすごく良い」しかわからないが、レコードをかける人達は、この何曲目が、このアルバムのどこどこのバージョンが、と盛り上がって楽しそうだ。私にはよくわからないけどすごいんやな、ここの世界ではきらきらしてるんやなと思うと、その幸せ感を分けてもらっている感じがする。
思えば「私にはよくわからないけどなんかすごいらしい」ものを見て、なるほどー、とわかっていく過程が昔から好きである。ルールのわからないスポーツやゲームの大会中継にも見入ってしまう。私にはわからないことでとても楽しんでいる人を見ていると、世界にはまだ知らないおもしろいことがたくさんあるし、もしかしたら私もいつかその楽しさを知るかもしれない、と思えるのは良い。=朝日新聞2022年1月5日掲載