1. HOME
  2. コラム
  3. BLことはじめ
  4. BL担当書店員が選んで語る!BLコミックBEST5【2021年度】

BL担当書店員が選んで語る!BLコミックBEST5【2021年度】

独断と偏見で選ぶBLコミックBEST5【2021年】

【井上將利セレクト】

【原周平セレクト】

井上將利セレクト

世界でいちばん遠い恋(1)

 麻生ミツ晃先生の作るストーリーの奥深さ、繊細さみたいなところが本当にすばらしいんです! 重度の難聴であるデイトレーダーの五十鈴(いすず)とバイオリンを専攻している音大生の十嘉(とうか)くんが友達として関係をスタートさせて、その関係をだんだんと深めていくという作品。会話の際、基本的には筆談やスマートフォンの音声変換アプリみたいなものを使わないとコミュニケーションが取れないという設定がある中で、本作では会話のシーンに重きを置いた作品作りをされています。十嘉くんが五十鈴さんへの気持ちをだんだんと自分の中でも具現化していって、溢れていくような思いが言葉になって出ていくシーンは鳥肌ものです。

>>井上さんおすすめの「世界でいちばん遠い恋(1)」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員が選ぶ「マイベストBL 2021

↑ページトップへ戻る

屍と花嫁

 赤河左岸先生の3作品目のコミックス。1作目が「羽化(メタモル)」という獣人系の作品で、2作目が「果ての荒野でバカンスを」という宇宙での生活を描いた作品からの本作で、けっこうエッジの効いたテイストが非常に魅力的な方です。本作は中国風のテイストで描かれていて、死んだ兄をいわゆる「キョンシー」として弟が復活させて花嫁として自分のそばに置いているというすごい話になっています。究極の兄弟愛を描いた作品です。過去作と世界観やキャラクターのデザインをみごとに描き分けていて、作者の画力、表現力の引き出しの幅がすばらしいと思います。

↑ページトップへ戻る

BOYS OF THE DEAD

 富田童子先生のBLデビュー作。厳密には2020年12月発売の作品なんですが、これはちょっと巷で話題の「ゾンBL」というカテゴライズの作品でして……(選んじゃいました)。ウイルスでゾンビが蔓延した終末期の世界が舞台になっています。作者の世界観の作り込みや設計みたいなところが凄まじく細かいところまで描かれていて、それと同時にこの世界で生きているキャラクターたちは絶望が顔に張り付いているような表情をちゃんとするんですよね。そんな中でも表紙にもなっている2人の少年、ライナスとコナーには楽しさみたいなものもあって、それが表情に表れているという、この微妙な表現力が何とも凄まじいんです。

>>「BOYS OF THE DEAD」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員が青田買い!「期待のニューカマー2020

↑ページトップへ戻る

メロンの味

 スタイリッシュなキャラクターデザインが特徴的な絵津鼓先生の作品で、本作は絵柄のテイストを少し変えた初めての作品です。ライブハウスで働く中城くんの家に、常連客の木内くんが彼女に振られて転がり込んで同居がスタートするというお話。基本的に2人の生活が描かれているんですけども、2人の会話が印象深いシーンが多いです。コミカルなところもあれば、かなり心にグサッとくる重い言葉が会話の中に織り交ぜられていたり、さらに無言のシーンも散りばめられていたりして、コミカルとシリアスの濃淡があって、よりシリアス度合いが伝わる表現になっているんですよね。正直この作品を読んで全て理解できましたって言えない自分がいて、それだけ人の心って理解しきるのはすごく難しいし、関わり合うのも難しいということを素直に教えてくれる、すばらしい作品です。

↑ページトップへ戻る

手を伸ばしたら、つばさ

 山田ノノノ先生の3作目です。いわゆるもう何でもできる非常に優秀なエリート学生・里見くんと、自分の夢に一直線な研究熱心な森野くんの関係を描いた作品。2人は向かい合うマンション住んでいるんですけど、森野くんがベランダから里見くんを観察をしていたら、ちょっと見てはいけないものを見てしまう……といったところから、この2人が絡み合って人間関係を変化させていきます。作者の特徴でもあると思うんですけど、闇だけではない、底の見えない何かを秘めているキャラクターを描くのがすごく上手なんです。里見くんが目の奥に何を抱えているのか、何を思っているのかを表に出さないので、読んでいてもハラハラするストーリーがすごく魅力的です。あと、個人的には身長差ギャップはエロいなと。今まで開けてなかった小窓をちょっと開けちゃったみたいな、いろいろ想像を掻き立てられるギャップもツボでした。

↑ページトップへ戻る

原周平セレクト

鬼と天国 再

 2018年に出た「鬼と天国」という作品の続編です。攻めが天獄(てんごく)先生という養護教諭、受けが青鬼(あおき)先生という高校の国語教師。前作では快楽や痛みのようなところから始まった関係からカップルになるまでが、本作では付き合ってからの2人が描かれています。前作に引き続き、キャラクターの心的な描写が面白いんです。それぞれが抱える心の問題みたいなものがあって、それを埋め合うような形で、2人の絆が育まれていくんですけれども、続編ではより愛情が深まっていくお話になっています。特にページの使い方がすごく心に響いたシーンがあって、それで「マイベスト2021」に決めちゃったくらいです。

>>原さんお気に入りのシーン&「鬼と天国 再」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員が選ぶ「マイベストBL 2021」

↑ページトップへ戻る

副音声はうるさい十分に(1)

 発想がすごいなと思った作品のナンバーワン。キャラクターの思っていることが、キャラクター同士は分からないんですけど、四角い枠で副音声として全部書かれていて読者にはわかってしまうという、新しい作品になっています。2人とも実は好きなのに、なかなか交わることができない、そういうモダモダを描く「両片思い」の作品ってたくさんありますが、その極致という作品。同じ職場で働く、野崎課長と部下の西田は、2人とも仕事ができるすごいクールで落ち着いたジェントルなリーマンっていう感じなんですけど、副音声で出ているところは、「好き!」とか、「やばい、やばい」みたいな感じで、感情がダダ漏れで面白いです。

>>「副音声はうるさい十分に(1)」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員の気になる一冊【2021年3月〜5月の近刊&新刊より】

↑ページトップへ戻る

オレとあたしと新世界

 オネエでゲイバーで働くしのぶと、ノンケで土木作業員の誠(マコちゃん)の2人がメインのお話です。この作品はとにかくドラマ性がすごい。出会いから自然と一緒にいられるようになるまでが冒頭で描かれていて、そろそろくっつくのかなあと思っていたら、車の事故でしのぶが昏睡状態になってしまって、目覚めるまでに10年かかるんですね。ようやくしのぶが目覚めるものの、2人が過ごしてきたなかにも圧倒的な時間の差が生まれてしまっていて、かみ合わない、不安を感じさせる話が増えてきます。とはいえラブラブでもあって、不思議な絆を結んでいる2人が今後どういう話を紡いでくれるのか、ずっと楽しみにしている作品です。周りを固める脇役も魅力的な面々が多くて、「人間ドラマ」といいますか、もう「ボーイズラブ」っていう中で語るには勿体ないなって思うほど。個人的には実写化してほしいなと思っています。

>>「オレとあたしと新世界」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員が選ぶ「続刊&シリーズ化、切望! 続きが読みたいBL」2選

↑ページトップへ戻る

モノトーン・ブルー

 作者のながべ先生は獣人や人外を描くのが上手な方で、犬や鳥、ドラゴンなどのそれぞれの魅力を上手く落とし込んでいて、作品が醸し出す雰囲気も好きなんですよね。本作は猫の獣人・ハチと蜥蜴の獣人・アオイ2人を中心に物語が展開されます。ハチは自分が関心のないことには全然興味を示さない、世界はモノトーンだみたいな考え方のキャラクター。そこにやってきたのが転校生のアオイくんで、過去にいろいろなことがあって尻尾を隠しているんですけど、ハチがそれを偶然見かけて、その尻尾の綺麗な青さにすごく惹かれるんです。アオイの尻尾を見る秘密の時間を共有するところから関係が育まれていく話で、これが恋なのかなって思うぐらいまでを描いています。世界観がすごく甘酸っぱいというか、高校生らしくて、BLを読むのが初めての方にもおすすめです。

↑ページトップへ戻る

シュガーソルト

 鳶田瀬ケビン先生の作品で、こちらも獣人が登場する世界観。攻めが沙藤(さとう)という人間、受けがソルトくんというクロコダイルというワニ獣人で、「獣人」というとモフモフのイメージがあるなかで、クロコダイルって新しいと思って手に取った作品です。お話としては、ヤンキー学園もの。対立する学園で番長を務める2人が喧嘩中にエレベーターに閉じ込められて、タイミング悪くソルトくんが発情期を迎えてしまい、なし崩し的な感じで始まった関係から、2人が付き合っていくまでのお話になっています。あまり深く悩んだり考えたりせずに楽しく読める作品です。クロコダイル獣人がものすごくゴツくて人間の1.5倍くらいあるんですけど、そんなキャラクターが“受け”というのがギャップ萌えでした。ソルトくんがすごく明るくて一途で、前向きな姿勢も含めて可愛く見えてくるっていう、そんな魅力のある作品です。

↑ページトップへ戻る

BEST5作品の詳細や2人の熱いトークは音声で!