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「伝統的な」家族観への固執が人口減少もたらす 「縛られる日本人」など藤田結子が選ぶ新書2点

『縛られる日本人』

 日本の人々が生活に不安を抱き、出生率も上がらない原因は「男女の役割に関する硬直的な社会規範」だとハーバード大教授の著者は看破する。メアリー・C・ブリントン『縛られる日本人』(中公新書・990円)は、「日本が消滅に向かっている」というほどの人口減少を分析する。日本に関する記述はこの問題に関心のある読者なら既知の点もあるだろうが、国際比較から新たな視点が得られる。スウェーデンは男性の大半が育休を取得するなど家庭と職場でジェンダー平等が進展した結果、高い出生率を維持。有給の育休制度がないアメリカの出生率が日本より高い一因は性別役割分業の弱さにあるという。本書の議論に従えば、「伝統的な」家族観に固執する政治家は日本を消滅に導いているといえるだろう。
★メアリー・C・ブリントン著 中公新書・990円

『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』

 神谷悠一『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』(集英社新書・902円)は、ジェンダーに関わる差別について、「思いやり」という心の問題と捉えてしまうことで逆に解決を難しくする側面をわかりやすく説明する。そして、差別の解消には「制度」が重要であることを様々な法制度を例に解説。特に性的マイノリティをめぐる状況を理解するうえで役立つ一冊だ。
★神谷悠一著 集英社新書・902円=朝日新聞2022年10月1日掲載