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三牧聖子が選ぶウクライナ戦争以後の世界を考える新書2点

『ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界』

 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界を帝国主義の時代に逆行させるのか。峯村健司ほか『ウクライナ戦争と米中対立 帝国主義に逆襲される世界』(幻冬舎新書・1210円)が展望する世界秩序は、混沌(こんとん)だが無秩序ではない。世界はロシアをとめられていないが、ロシア流の帝国主義に同調する動きもない。ルールに基づく国際秩序を再建する望みはある。侵略的意図を露(あら)わにする核保有国ロシアを前に、可能な安全保障体制を冷静に探る本書はウクライナ戦争後の世界への最良の手引となる。
★峯村健司ほか 幻冬舎新書・1210円

『非戦の安全保障論 ウクライナ戦争以後の日本の戦略』

 日本でも国防の議論が活発だが、そもそも国防とは何か。国家の安全を論ずるので十分なのか。柳澤協二ほか著、自衛隊を活(い)かす会編『非戦の安全保障論 ウクライナ戦争以後の日本の戦略』(集英社新書・990円)は、国防とは国民を守るよりまず、国民に命がけで国家を守ることを求めるものだと注意を促し、いかに国民を守るかの議論がもっと必要だとする。

 昨年の世界価値観調査が話題を呼んでいる。「戦争になったら祖国のために戦うか」との問いにイエスと答えた割合は、日本は世界最低の13%だった。この結果が意味することは何か。国防意識の低さか。国家への信頼の欠如か。2冊を併せ読めば日本に必要な国防論が多角的に見えてくる。
★柳澤協二ほか著 集英社新書・990円=朝日新聞2022年10月15日