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BL担当書店員が選んで語る! マイベストBL4選【2022年】

井上將利が選ぶマイベストBL4選【2022年】

スカーレット・ベリ子「保坂さんと三好くん」

 「マイベストBL 2022」として一つだけ選ぶとすれば、この作品です。「ジャッカス!」の続きにあたる作品なので、まだ読んでいない方は「ジャッカス!」から、ぜひ!

 本作は「ジャッカス」のサブキャラとして出てきた保坂さんと三好くんの年の差カップルの話になります。前作では2人の関係性がちょっとできあがったところで終わったのですが、2人はなんやかんや順調に距離を縮めていき、保坂さんから「大学に入ったら一緒に暮らそうか」とプチプロポーズみたいなことを言われて三好くんは合鍵を渡されます。でも、三好くん的にはまだ正式にお付き合いもしていないし、自分の気持ちがどこにあるのかもちゃんと落とし込めてない状況下でパニックになって保坂さんと距離を置くことに。8カ月後(!)、保坂さんと偶然再会して、いろいろあった後、保坂さんの日常生活を盗撮するという、盗撮生活が始まります。まさかの展開にびっくりしたものの、前作からしてこじらせ大魔王・三好なので、彼ならこのぐらいやるだろうと僕は納得しました(笑)。でも、保坂さんの生活を覗き見ることで、いかに自分が愛されているかが嫌でも伝わって、逆に自分はそんなふうに愛する自信がないと、三好くんはジレンマに陥ってしまいます。前作では尖りまくっていた三好くんが、丸くなっているところに衝撃を隠せません。そのギャップが半端なく面白いですし、この変わりようは「保坂さん、すごいな」という感じです!

 この2人の行く末は本当に楽しみで仕方ありません。そして、それを表現するベリ子先生の描く力が、やっぱり一段レベルが違うなといつも思います。肉体の描き方が官能的すぎて、リアルな人間よりも遥かにエロいという……。保坂さんの三好くんに対する凄まじい愛情表現をぜひ楽しんでいただきたいですし、読者の予想、さらには保坂さんの予想を超えて成長していく三好くんにも期待して最後まで読んでいただきたいです。

>>井上さんによる「保坂さんと三好くん」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員が選ぶ「マイベストBL 2022」

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一穂ミチ×ymz「ブルーモーメント」

 実力派のおふたりがコラボした夢のような作品。コロナ禍を描いていて、作中では現実と同じくコロナが大流行して人々の日常が大きく変わり、今までの生き方ができなくなった世の中を忠実に再現しています。一穂ミチ先生が原作を書かれていて、モノローグの言葉の端々に一穂先生のエッセンスが散りばめられています。作画を担当されたymz先生も、作中では基本的にみんなマスクをしているので表情がわかりづらいのに、目元しか出ていない作画で微妙な感情をきっちり描き分ける表現力がすごいんですよね。

 物語としては、「BLUE MOMENT」というバーの店長をしている響、常連客の尚人、バーのオーナーで響さんの恋人・征司さんの3人が出てくる三角関係のお話です。征司さんと積極的にアプローチしてくる尚人との間で響の心が揺れ動く様が丁寧に描かれています。「何で あの子といたらこの人のこと思い出して この人といたらあの子のこと考えてるんだろう?」と、心ここにあらずといった響の感情が表現されていて、三角関係の真髄はここにありと感じました。

 漫画や小説って、現実逃避するためや現実にはないものを求めて読むところがやっぱりあると思うんですが、そんな中、本当にありのままの現実を描くことに挑戦されたところも注目すべきポイントだと思います。今だからこそ、ぜひ読んでほしい作品です。

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パース「おさななじみに彼氏ができた話」

 パース先生のデビューコミックス。表紙がポップで、青春ピュアラブストーリーかなと思ったらまったく違っていて、いい意味で「なんて表紙詐欺だろう」という一作です。

 中3の夏、幼なじみのゆうまから、彼氏ができたという報告を受けたみちこちゃん。相手は女子人気も高い恭也という同級生の子でした。ある日の放課後、みちこちゃんは、ゆうまが恭也を後ろ手に縛って、みちこちゃんに嫌がらせをしたことを謝罪させているシーンを目の当たりにしてしまいます。ゆうまは嫉妬されることがとにかく嫌いな男の子なんです。

 「嫉妬」というキーワードが一つのテーマになっている本作。嫉妬や執着って、ある意味人間の本質でもあるので、異常だと思いつつも読んでいると「確かにそうだな」と思ってしまうポイントが多々出てくるところがすごく魅力的です。「これは愛なんだろうか」と思いながらも、「あ、でも多分これこそ愛なんだな」となるという……。そこに至るまでの紆余曲折は本当に面白くて、ゆうまの元カノの女の子たちも出てきて話がふくらんでいくんですが、基本総じてみんなヤバイ奴なので(笑)、そこをぜひ楽しんでいただきたいです。

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丸木戸マキ「僕らのミクロな終末」

 2023年1月から実写ドラマ化も決まっているホットなタイトル。まず、ストーリーを簡単に言いますと、地球に隕石がぶつかって滅亡するまであと10日っていうお話です。奇想天外な設定なんですが、さらにそこから奇想天外な話が続いていきます(笑)。

 地球滅亡のニュースを見た社畜サラリーマンの真澄は、残りの余生を穏やかに過ごそうと母校の大学の図書館に行くんですが、そこで元彼の律に遭遇します。遊び人の律にセフレ扱いをされた真澄は絶望して別れることになり、これがトラウマに。そんな過去があったのに、律は真澄に死体処理の手伝いをお願いするというところから物語は動き出します。

 あと10日しかないという中で、「元彼」という設定のおかげで2人の関係性に下地が生まれ、物語に厚みをもたせているのが巧いなと感じました。もうすぐ自分たちが死ぬという状況下だから言えること、やれることというのが表現として出てきて、お互いに抱えるトラウマみたいなものや2人の間の壁がとけていく様が見事に描かれた作品です。

>>原さんによる「僕らのミクロな終末」の詳細レビューはこちら
BL担当書店員が選ぶ「マイベストBL 2022」

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井上さんの熱い語りを音声で!