1. HOME
  2. インタビュー
  3. えほん新定番
  4. 47都道府県を楽しみながら覚える あきやまかぜさぶろうさんの「1日10分でちずをおぼえる絵本」 

47都道府県を楽しみながら覚える あきやまかぜさぶろうさんの「1日10分でちずをおぼえる絵本」 

『1日10分でちずをおぼえる絵本』(白泉社)より

都道府県のかたちを身近なものに見立てる

——イラストを見ながら「まねき猫のかたちは宮城県!」と3回繰り返せば、自然と頭にインプット。47都道府県のシルエットを動物や食べ物などのモチーフに見立てて覚える『1日10分でちずをおぼえる絵本』(白泉社)の作者は、児童絵画の指導に長年携わってきた画家のあきやまかぜさぶろうさんだ。「楽しみながら覚えられて、忘れにくい」と人気の地図絵本のアイデアは、どこから生まれたのか。

『1日10分でちずをおぼえる絵本』(白泉社)より

 小学4年生の社会の授業で初めて、日本地図や都道府県について学習すると思うのですが、都道府県の位置関係ってなかなか覚えられないですよね。子どもが中学生のとき、白地図の都道府県名をすべて答えるテストがあったんですが、大人でも全問正解するのは難しい。なにか身近な「もののかたち」に当てはめた日本地図をつくれば忘れないのではないかと思ったのが、絵本制作のきっかけです。

 都道府県のシルエットを眺めながら、動物や食べ物、乗り物などに見えないか、ひたすら頭を悩ませました。「エイのかたちは北海道」「エビのかたちは青森県」「カエルのかたちは滋賀県」など、すぐに思い浮かんだものもあれば、なかなかぴったりしたかたちがイメージできない都道府県もありました。こうした都道府県は、かたちの印象が弱く、実際に覚えにくいんです。

 絵画指導をしている幼稚園で、試作版を子どもたちに見てもらって、覚えやすいかどうかを何度も試しました。イラストを入れた地図を見せながら、「長靴のかたちは鹿児島県!」と3回唱えた後に、少し時間をあけてから白地図を見せてみる。ここで忘れているようなら、イラストのイメージが地図のかたちに合っていないということなので、ボツにします。鹿児島県は最終的に「サメ」のかたちにしたら、子どもたちにもようやく覚えてもらえるようになりました。

『1日10分でちずをおぼえる絵本』(白泉社)より

一度覚えたら忘れないよう試行錯誤

——園児たちの協力を得て、「一度見たら忘れない」モチーフを追求。2年もの間、試行錯誤を繰り返した。2014年に初版を発行してから版を重ね、2017年には難易度の高い県をより覚えやすくした改訂版を出版。読者の好評を受け、『小学生版 1日10分 日本地図をおぼえる本』(白泉社)も手がけた。

 幼児期に一度、“かたち”として覚えたものって、ずっと記憶に残り続けると思うんですよね。実際に絵本を出してから「幼稚園に通う子どもが、3週間で日本全国すべて覚えました」といった読者からの反響がたくさん届きました。「天気予報で地図が出てくると、子どもが『ここは富山県!』と教えてくれるようになりました」といった声も。幼児期に覚えた47都道府県の知識は、大きくなっても宝物として残るんじゃないかな。ほかにも、主な特産物や名所などをイラストで表現したり、ミニゲームやクイズ、簡単な迷路など遊びの要素を入れたりなど、繰り返し読んでも飽きない工夫をしています。

 「改訂版」では、栃木県、山梨県、島根県、鳥取県、岡山県の5県のイラストを変更。栃木はいちご、山梨はぶどうなど、覚えやすく県のイメージと合ったモチーフに修正しました。

 同時期に出版した「小学生版」は、慶應義塾幼稚舎の大野俊一先生の協力を得て、内容を小学生向けにレベルアップ。都道府県を「もののかたち」に見立てるという部分はそのままに、県庁所在地や山脈、川、平野、半島などの地形、「五・七・五」調で覚える名所や特産品など、大事なポイントのみ、ぎゅっとまとめてあります。小さな字で細かく描かれた「地図帳」を見て、地理嫌いになる子も多いと思いますが、この「小学生版」はイラストを眺めるだけで自然に覚えられるつくりを目指しました。

小学生を対象に地形や名所、特産品のデータも加えた。『小学生版 1日10分日本地図をおぼえる本』(白泉社)より

子どもとのふれ合いが原動力に

——あきやまさんの児童絵画指導のメソッドは、「シンプルな図形でもののかたちをとらえて絵を描く」ことだ。『1日10分で地図をおぼえる絵本』シリーズの原点には、絵本作家としてのデビュー作である『1日10分でえがじょうずにかけるほん』(講談社)がある。

 幼稚園時代、息子の描いた「母の日」の絵を見て驚いたことがありました。「お母さんを描いた」というのですが、画用紙に描かれているのは1本の線だけ。「お母さんの顔は丸だよね」と言っても、いざ画用紙に向かうと描けない。「もののかたちをとらえること自体が苦手なんだ」ということが分かったんです。息子に、丸や三角、四角で、ざっくりともののかたちをとらえて、そうしたパーツを組み合わせて絵を描くことを教えたら、ぐんぐん上達したことを覚えています。

 その後、幼稚園の先生に頼まれて、お絵描き教室の講師をするようになり、「絵の描き方が分からない」子がたくさんいることに気付きました。「自由に描きなさい」と先生に言われても描き出せず、じっと固まっていたり、嫌になって画用紙を破いてしまったり……。でも、「ライオンを描くときは、ぐるりんとお顔の丸を描いて、ギザギザのたてがみを周りに、目を2つぐるぐる、鼻1つぐるぐる、おひげ……」とパーツごとに描きながらコツを教えるだけで、どんな子でも絵が描けるようになる。

 ピアノだって、まずは「ドレミ」の音階を覚えてから練習するでしょう? 絵画も同じ。描き方の基本を教わらないと、自由な表現をすることもできないし、個性も備わらないと思います。お絵描き教室で生徒のためにつくったワークブックが、『1日10分でえがじょうずにかけるほん』(講談社)の原型となりました。「かたちをとらえてイメージする」ことは、地図シリーズにもつながる土台の部分となっていますね。これまでの指導経験の集大成として、2年前からは、このメソッドによるお絵描き教室の全国展開にも取り組んでいます。

——現在、『1日10分でちずをおぼえる絵本』シリーズの新作を制作中。今年の7月6日ごろに出版を予定する絵本は、「さまざまな“日本一”」がテーマだという。

 日本地図をはじめ、世界地図、国旗などでシリーズを展開してきましたが、今つくっているのが「日本一」を集めた絵本です。山、川、平野などの地形から農水産物までさまざまな日本一を分かりやすくまとめています。迷路やクイズなど、ゲーム感覚で覚えるための仕掛けも盛りだくさん。『1日10分でちずをおぼえる絵本』と同様、ぜひ親子で楽しみながら覚えていただければと思います。