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ク・ビョンモ「破果」 鮮烈な「おばあちゃん」像描く

 「ノワール×おばあちゃん?!」

 そんな帯が目をひくク・ビョンモ著『破果(はか)』(小山内園子訳)は、異例づくしの韓国小説だ。

 訳者あとがきによれば、2013年に韓国で出版された原作は当初、大きな話題にならなかった。だが、韓国フェミニズムの興隆によって主人公のキャラクターを称賛する声が起き、「読者に召還される」形で、18年に改訂版が刊行された。

 主人公「爪角(チョガク)」は65歳の女性。業務中はノーブランドの衣服で全身を包み「中産階級の老人はかくやあらん」とした風貌(ふうぼう)だが、実は職歴45年のすご腕の殺し屋。公園の運動器具も活用して鍛錬を怠らない。「弱者」として扱われがちな高齢女性が、この物語の中では誰よりも強くクールだ。だが、肉体の衰えとともに、心には、ある年下男性に対する抑えきれない感情が芽生えて……。

 老女への偏見を笑うようなラストシーンがすがすがしく、新しい「おばあちゃん」像だ。読者からは人生や老いのリアリティーに共感するという声も多く寄せられているという。同書の編集者である北城玲奈さんは「『お約束』を攪乱(かくらん)し躍動する主人公の姿は、変化したように見えて実は何も変わらない社会にあって、鮮烈なインパクトと説得力をもつ」と話す。(守真弓)=朝日新聞2023年3月4日掲載