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イ・ジョンチョル「カデギ」 物流現場の過酷、実体験で克明に

©Lee Jong―chul 2019

 早ければ翌日に届くネット通販。つい便利に使ってしまうが、物流現場にしわ寄せが行っていることは想像に難くない。その現場を実体験に基づき克明に描いたのが本作だ。

 漫画家をめざしソウルに出てきた青年が、生活費を稼ぐため「カデギ」と呼ばれる荷おろし作業のバイトに就く。次々やってくるトラックに壁のようにぎっしり積まれた荷物をおろしていく。重い荷物に貼られた「こわれもの注意」のシールに「こっちが先に壊れそう」とぼやく青年。経営していた会社がつぶれてカデギをしているという中年男性が持つ荷物に「優しく扱ってください」との注意書きがあるのもエスプリが利いている。

 舞台は韓国だが、非正規労働者が人間扱いされない点や名ばかり個人事業主のドライバーの過酷さは日本も同様だろう。奨学金の返済に追われバイトで疲弊する青年は、肝心のマンガを描く時間が十分に取れない。デザイン会社で働く同級生も薄給で働きづめ。そんな厳しい状況にあっても、随所に人間同士のつながりが生まれるのには救われる。

 淡々とした筆致が逆に情感を誘う。「みんな心も身体も…こわれもの注意です」というセリフを、すべての労働者に贈りたい。=朝日新聞2023年8月19日掲載