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「チビにいちゃんとOちゃん」ほか子どもにオススメの3冊 大人に見守られ毎日のびのび

「チビにいちゃんとO(オー)ちゃん」

 本書はスウェーデン児童文学の名作ですが、日本では続編の「すえっこO(オー)ちゃん」が先に出版されていて、知っている人もいるのではないでしょうか。

 主人公のチビにいちゃんはラルソン家7人きょうだいの6番目で、すえっこOちゃんはたった1人の妹です。チビにいちゃんの日常はまわりの大人たちをドキドキ・ハラハラさせる行動の連続です。Oちゃんと2人で家の中の廊下を海に見立ててたらいを出してこいでみたり、お昼寝をしているOちゃんの顔にインクで化粧してしまったりします。また、ある時はこおった海の上を歩いたりと、とんでもないことをしますが、本人は気にする様子もなく毎日が楽しそうです。特にチビにいちゃんと時計屋のリリヤさんとのやりとりは面白く、心があたたかくなります。子どものいたずらや予想できない行動を叱るのではなく、あたたかく見守る大人でいたいと思いました。

 子どもたちに自由でのびのびとした生活を楽しんでほしいという作者、出版社や翻訳者など作り手の熱い思いが伝わってきました。(E・ウンネルスタッド文、小宮由訳、さこももみ絵、瑞雲舎、1760円、小学校中学年から)【ちいさいおうち書店店長 越高一夫さん】

「ねみちゃんのチョッキ」

 あの「ねずみくんのチョッキ」からもうすぐ50年! そして記念すべき新刊はなんと40巻目!! タイトルからもわかるように、1巻目と対になるような特別なお話です。

 素敵なチョッキをうらやましがる動物たちに、ねずみくんは「ねみちゃんにいえばつくってくれるよ」というのですが……。

 上野紀子先生が亡くなったあとも、残された絵を使ってなかえよしを先生はシリーズを作り続けてきました。今回も「ねずみくんのチョッキ」の絵がふんだんに使われています。お二人の愛に溢(あふ)れた一冊です。(なかえよしを作、上野紀子絵、ポプラ社、1430円、3歳から)【丸善丸の内本店 兼森理恵さん】

「まじょのすいぞくかん」

 森に突然現れた水族館の建物。女の子と犬が入ってみると、並んだ水槽にいるのは「アマゾンのはんぎょじん」とか鼻の長い「テングザメ」とか毛むくじゃらの「チョウチンクマアンコウ」など、変な魚ばかり。そして微(かす)かな声が聞こえてきました。「たすけてくれえ……ぶくぶく」。

 謎めいたスリル。ユーモアとナンセンス。危機一髪かと思いきや、めでたい展開。たっぷりいろんな感情を味わえて、病みつきになる物語絵本です。地球の周りを飛び続ける魔女の、せこくも壮大なラストシーンが秀逸。(佐々木マキ作、福音館書店、1100円、4歳から)【絵本評論家 広松由希子さん】=朝日新聞2023年9月30日掲載