うつさんは、自分とは違う惑星に住んでいるんじゃないかと思うような写真を撮る。大量の作品はどれも、彼女の好きなものやことをはっきり声高に伝えながら、鑑賞者の心にまっすぐ飛び込んでくる。特にやりたいことも、そこまで好きなこともないわたしは、こんなに一途になにかを愛せる彼女に憧れている。
一般に「グロテスク」だと見なされがちな昆虫や動植物、あるいはモチーフをいくつか組み合わせた結果グロテスク感を醸し出すオブジェが、いったん写真になると一変して、愉快でキッチュでポジティブな表現に変わる。うさぎのシルバニアファミリーと戯れるねずみ。可愛いし、怖いし、面白い。思わず、くすくす笑い出してしまう。まとまらない気持ちが胸に押し寄せて混乱するのに、その感覚はものすごく腑(ふ)に落ちる。
しっくりくるのは世界が、生や性や死や醜さや美しさや怖さや可愛さなどにそもそも価値の上下を設けていない、あまたの個性をただじゃんっ、とばら撒(ま)いただけの場所だからなのかもしれない。=朝日新聞2023年11月18日掲載