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体験で知る創作のおもしろさ 絵本作家・宮西達也さん@大阪・太子町立山田小学校

宮西達也さんにコツを教わりながらオリジナルのキャラクターをはさみで切り分ける=2023年10月25日、大阪府太子町立山田小学校、御堂義乗氏撮影

 宮西達也さんの最新情報はFacebookの「宮西達也さん(勝手に私設応援団)」ページで。

はじける笑顔で「はーい!」

「まだー?」「本当にホンモノが来るの?」
 会場となる体育館の外から子どもたちのにぎやかな声が聞こえてくる。人気の絵本作家、宮西達也さんがやってくるのを山田小の児童たちは何日も前から首を長くして待っていたのだ。
 全校生がドキドキ、ワクワクの面持ちで体育館に入場すると、目の前には待ちわびていた宮西さんが!
「こんにちは! ホンモノだよー」と宮西さんが声をかけると、子どもたちから大きな歓声が上がった。
 あいさつもそこそこに、宮西さんは自作の絵本の読み聞かせを披露。最初は『はーい!』(アリス館)から。
 ネコ、イヌ、カニにゾウにおばけも! みんな呼ばれたら元気よく「はーい!」と返事をする、そんな絵本だ。スライドに映し出される動物たちと一緒に、子どもたちも大きな声で「はーい!」。屈託のない笑顔がはじけた。

絵本『はーい!』を朗読する宮西達也さん

 宮西さんの多くの作品は海外でも愛されている。「中国で『ぼくパンダくん』っていう絵本を出したんだ。みんなパンダは見たことある?」とたずねると、「ある!」「ないー」。スライドには竹ヤブの写真が。
「中国の深圳(しんせん)というところにパンダが150頭も暮らしてるところがあってね、ここにすごーくかわいいパンダがいたんだ。ほら!」。写真に写っているのは、パンダのかぶりものをして竹やぶからひょっこりと顔をだす宮西さん。笑いの渦が巻き起こる。
 そして「パンダクイズ」!
 パンダのしっぽは何色だ? 黒? 白? それとも?
 大多数が「黒」。「白」を選んだ子は少数派。
 正解は……写真に映るパンダのお尻には、白いしっぽ!
「えー!」「そーなんや〜」と驚きの声が上がった。

 続いてもう1冊、『ふしぎなキャンディーやさん』。タヌキのおじさんが売る「ふしぎなキャンディー」は、なめるとすごいことが起きる。それを買ったブタくんはイタズラを思いつき……というお話。宮西さんは、山田小の先生3人を登場キャラクターの「声優」に任命した。
「もっと怖い声で〜」「さっきと違う声で!」といった宮西さんのムチャ振りにタジタジになって演じる先生の姿に、子どもたちは大喜び! 絵本の世界をいつもとは違う形で堪能できたようだ。

読み聞かせには先生たちも参加してくれました

ハードルを越えて「夢中スイッチ」オン!

 読み聞かせに続いては、1年生と2年生が参加するワークショップ。
 段ボールの紙と、黒とオレンジのマーカーを一人ひとりに配り、宮西さんは呼びかけた。
「さぁ、こういうのを作るよ!」
 お手本として、宮西さんが授業の前に作った作品は、台紙の上に表情豊かな不思議な生き物たち? が並んでいる。好きなキャラやアイドルなどを並べて楽しむ推し活動グッズのアクリルスタンドの段ボール版のような立体作品だ。

 まずはキャラを並べる土台づくりから。
 厚めの段ボールを好きな形に切り、その上に色を塗ったり模様を描いたりしていく。
「僕はオレンジ色に塗って角を丸く切りました。みんなも好きなように切って、色をつけてみよう」
 宮西さんの土台を参考にする子もいれば、ハート形に切ったり、ドット柄や斜めのストライプ柄で彩ったりする個性派も。
 次はこの土台にのるキャラクターを作る。テーマは「宇宙人や怪獣」。アニメやゲームに出てくるキャラではなく、「自分が考えたオリジナルキャラ」が条件だ。「すぐに思い浮かばなかったら、たとえば鳥を描いてそこに手をつける、魚に足を、野菜に目や鼻を描いてみる、そんなふうに描いてみよう!」と宮西さん。
 マーカーを握りしめ用紙に向かう子どもたち。しかし、ここから作業は難航する。何を描いたらいいのか迷って手が止まってしまったり、書いた絵が大きすぎたり、逆に小さすぎたり……。
「このあと切り取って土台の上に立てるから、ちょっと大きすぎかな」「切り取ることを考えて、切り取りやすいように描いてみて」「一つや二つじゃさみしいから、大きめの絵を四つから五つは描こうね」
 一人ひとりに丁寧にアドバイスをしてまわる宮西さん。その言葉に子どもたちの手から迷いが消え、動き出す。背中に羽を背負ったウサギのような宇宙人、トカゲや恐竜っぽい怪獣……。個性あふれるたくさんのキャラクターが生まれた。
 絵を切り取る段になると、またもペースダウン。子どもたちはまだ手が小さく、力も弱い。工作用のハサミで硬い段ボールから絵を切り取るのは至難の業だったのだ。「うまく切れへん〜」と格闘する様子に、「1、2年生には難しかったかなぁ」と宮西さんもちょっぴり不安そう。それでも、「絵より少し大きく切り取ってから細かい部分を切り抜いていこう」と、子どもたちを手伝いながら励ましの声をかけてまわる。

楽しいキャラクターが描けました。次はこれをはさみで切り離して……

 時間はあっという間にすぎていく。タイムリミットは給食が始まる12時すぎまで。ここで宮西さんからみんなにスペシャルプレゼントが。実は前日、夜遅くまでかけて児童全員分の名前を手書きしネームプレートを作成していた。
「これからこのネームプレートと、切り取った怪獣や宇宙人を台紙の上に立てて並べていくよ!」。宮西さんは残っている用紙とハサミを手に「こんな風に三角形に切って、接着剤をつけて支えにして……。ほーら立った! さぁ、みんなもやってみよう」
 難易度高めの作業だ。ところが、「夢中スイッチ」が入ったのか、子どもたちに勢いがつき始めた。黙々と手を動かす子、「ねえねえ、これでええの?」と宮西さんや先生たちに確認しながらボンド付けを進める子……。それぞれのスタイルで手を動かし、台紙に怪獣と宇宙人を並べていく。作品の正面には宮西さんお手製のネームプレートを貼り付け、一人ひとりオリジナルの「マイ作品」が次々に誕生した。

 その様子に「うれしい驚きだなぁ」と宮西さん。「1、2年生だからもっと手伝ってあげないとできないかも、完成は難しいかもなと危惧したけど、最後はみんな自力で立派に完成させた。子どもたちの想像力と創造力を信じ、手助けしすぎないことは大事。出来上がった素晴らしい作品を見て気付かされました」。そうしみじみと語ると、子どもたちの方を向き直し、こう呼びかけた。「自分の作品、見てほしい人!」
「はーい!」「はーい!!」。かわいい小さな手があちこちで挙がる。最初に宮西さんが読み聞かせをした絵本に出てきた動物たちに負けないほどの、元気いっぱいの「はーい!」が体育館に響き渡った。

個性あふれる作品が次々と完成

生徒たちの感想は…

奥田悠真くん(1年)「たいへんやったのは切ること、楽しかったのは接着剤で貼ったこと。自分でもこんなん作れるんやって思いました」

木山和花さん(2年)「何を書くか考えるのが難しかったけど、宇宙の世界がちょっとうまくできました。完成してすごくうれしかったです」