1. HOME
  2. インタビュー
  3. えほん新定番
  4. 北村裕花さんの絵本「こどもかいぎ」 親に怒られたとき、どうする?

北村裕花さんの絵本「こどもかいぎ」 親に怒られたとき、どうする?

『こどもかいぎ』(フレーベル館)より

編集者と二人三脚でつくり上げた

——スーツを着て、きまじめな表情で円卓に座るこどもたち。今日の会議のテーマは……「おこられたときはどうしたらいいか?」。いろんな意見が飛び出すなか、子どもたちが最後に出した結論は——? 北村裕花さんの絵本『こどもかいぎ』(フレーベル館)は、「あるある!」と共感を覚え、最後にあたたかい気持ちになれる物語だ。

『こどもかいぎ』(フレーベル館)より

 「小さな子どもたちが、“会議”する絵本をつくってみませんか」。『こどもかいぎ』(フレーベル館)を制作することになったのは、フレーベル館の編集さんのひと言がきっかけです。初めてアイデアをうかがったとき、子どもたちがおおまじめに会議しているシーンが鮮やかに思い浮かびました。スーツを着て、円卓に座って、まるで大人のように会議していたら面白いだろうなと。そこから担当編集さんと打ち合わせを重ね、おはなしを練り上げていきました。

 実際の子どもたちの様子を見学するために、フレーベル館が運営する保育園を訪れたことも。この絵本には議長のけんたくんをはじめ、6人の子どもたちが登場するのですが、保育園の見学はキャラクターづくりの参考にもなったと思います。

 絵本の最後の見返し部分に6人それぞれの性格と「すきなたべもの」を載せているのですが、ここは編集さんとともに細部までこだわった部分なので、ぜひ楽しんでいただければ(笑)。ストーリーから構成、細かな演出まで、当時の担当編集さんと何度も話し合いながら、二人三脚でつくった思い出深い絵本です。

——「かいぎ」は、いつしか「お父さん、お母さんが怒ったら、どんなに怖いのか」という話題に。鬼のようになるお父さん、口から火を噴く怪獣のようなお母さんの姿が、読者の笑いを誘う。

『こどもかいぎ』(フレーベル館)より

 子どもたちの議論はだんだん逸れていき、「うちのお父さん、お母さんは、怒ったらこんなにコワイ!」という話になってしまうんですね。「鬼のように怒るお父さん」を青鬼で描いたのは、絵本ならではの表現ですが、子どもたちに「そうそう。うちのお父さん、お母さんも怒るときはこうなるんだよね!」と、共感してもらえるとうれしいです。

絵は自由に、文はシンプルに

——大胆で力強いタッチとカラフルな色づかいが、北村さんの絵の真骨頂。人物の顔は、青や黄色などさまざまな色合いで彩られている。

 眉や目、鼻などのパーツに、青や黄色などカラフルな色をのせているので驚かれることもあるのですが、いろんな色を入れたほうがきれいだし、楽しい。絵画の描き方では、影を黒やグレーではなく、青っぽい色で表現することがあるんですね。私も「眉毛やりんかく線は黒」「影はグレー」などの決まった色づかいにとらわれないで、自由に描きたいという思いがあります。

 人物の顔を大きく描くのが好きなんです。アップの絵がつい多くなりがちなので、人物にぐっと寄った後は「引き」のシーンを入れて全体を見せるなど、ページをめくったときに緩急がつくよう、工夫しています。

 この作品でも、子どもたちが会議するシーンがすぐに思い浮かんだように、描きたいシーンが先に浮かんでそこからお話を考えていくタイプ。絵本をひとりで制作するときは、「絵は自由に、文章はなるべくシンプルに」ということを心がけています。

——「ついガミガミとしかってしまう」大人も、「叱られると素直にごめんなさいと言えなくなる」子どもも共感する本作。「おこられたら、“ぎゅっとする”のはどうか」という子どもたちの提案に、はっとさせられる。

『こどもかいぎ』(フレーベル館)より

 「親に怒られたらどうすればいいか」。絵本の結末にかかわるのでかなり頭を悩ませた部分です。ヒントになったのは、「タッチケア」の話かもしれません。介護の現場では、高齢者の方に手で触れたり、さすったりすることで、痛みなどがやわらいで心も安らぐと聞いたことがあったんですね。最終的に私が、謝る前にまず「ぎゅっとする」のはどうか、と編集さんに提案したら、「いいですね!」と言ってくださったことを覚えています。

 親子関係で「こうすれば正解だよ」というのはないと思うのですが、やっぱり「ぎゅっとする」——肌を触れ合わせると、お互いがすごく安心できる。絵本を楽しく読んでもらいながら、親子のスキンシップのきっかけにしてもらえるとうれしいなと思っています。