スマホの普及や価格高騰などで、出版業界は逆風続きだ。児童書は長らく堅調に推移してきたが、コロナ明け以降はやや落ち込んでいるようだ。定番の分野である学習マンガも、その例外ではない。
とはいえ、学習マンガの分野は手堅い売り上げを見込め、ロングセラーにもなりうるから、出版社にとっては魅力的なのだろう。海外勢の参入も相次いでおり、累計一四〇〇万部を突破した「科学漫画サバイバル」シリーズ(朝日新聞出版)、そして今回取り上げる「つかめ!理科ダマン」も韓国から上陸した作品だ。
基本的に、科学については天才的な大学生のシン、その妹ジュリ、パパ、ママの家族が繰り広げるギャグマンガであり、一つ一つの作品は四~一〇ページ程度と短い。テーマも、「おならってどうしてくさいの?」「宇宙人って本当にいるの?」といった、子供が興味を持つ題材を入り口にしている。あえて科学知識を密度高く詰め込むことはせず、あくまで一話で一つの知識という構成だ。本書はもともとがウェブ連載であったというから、その中で育ててきた「勝利の方程式」なのだろう。途中に挟まれるコラムを読めば、さらに深い知識が身につく作りになっている。専門家の監修を受けており、ハイレベルで内容も正確だ。
学習マンガは、子供が手に取ってくれる確率が高く、読み終えるとその内容を自慢気(じまんげ)に話してくれたりもする。親としても手応えを感じやすく、続編も買ってやりたくなる心理が働く。これが、売れ続ける理由の一つなのだろう。もちろん学習効果も高く、将来授業で出てきた時に「あっ、あの本で読んだやつだ」と思えるだけでも相当に受け止め方が変わってくることだろう。科学の世界の入り口としてのマンガの優位性を、改めて感じさせられた。=朝日新聞2024年8月17日掲載
◇
呉華順訳。マガジンハウス・1300円。21年8月刊。15刷26万部。7巻(みんなで地球を冒険!編)までの累計発行部数は100万部。「笑いながら自然と勉強でき、親御さんも楽できる親子でうれしい本」と担当者。