生活の何げない場面をモチーフに、思考や感情を縦横無尽に巡らせ、シュールな味わいたっぷりの世界観を描き出す詩集である。
「Summer」「Bird」など英語の題がついた48編を収録する。難解な単語はどこにもなく、日常の言葉ばかりなのに、並べ方次第で、想像もしない世界が立ち現れる。
地に足のついた飛翔(ひしょう)、とでもいうのか。作者の思いに寄り添うのも楽しいし、読み手が自由に心の旅を堪能してもいい。
たとえば、「Oh someone」の一節。「雨が 乱暴に 心に入りこんできて あらゆるものに降っていって びしょ濡(ぬ)れのままで」
そこまで読んで、後ろから見えない矢で射られた。私の胸元に突き出した鏃(やじり)は、血潮ではなく、涙にまみれていた。=青土社・2420円(星野学)=朝日新聞2024年12月7日掲載