私の場合は「普通の人は死にたいって思わないものなんですよ」と言われました。そのとき私は普通じゃないんだと思いました。私もずっと土門さんのように「死にたい」と思ってたんです。土門さんと違って2回死ぬことを実行しようとしたことがあります。1度目は14階から飛び降りようとして、2度目は包丁で自分を刺そうとしました。でもどっちも「そんなことしたら死んじゃうよ」と思って正気に戻ってやめました。
土門さんの本を読んで「そうか、あのとき私もカウンセリングに助けを求めてたら良かったんだ」と思いました。私はこの世との折り合いをつけられない自分が悪いから苦しくて死にたくなるのだと考えてました。だから私が悪いのだから誰かに助けてもらおうとか全然思いませんでした。
土門さんとカウンセラーさんとのやり取りを読んでると、私の苦しみを本の中に出てくるカウンセラーさんに聞いてもらってるような感覚になりました。そういう感覚が私も励ましてもらってる気持ちになって、二次的にカウンセリングを受けているように感じました。本を読み進めていくうちに私自身も肩の力が抜けていくのがわかりました。
土門さんは自分のことを「火星人」と思っていたそうだけど私は自分を「妖怪」だと思うようにしてました。そう思うことで「自分が入っていけないこの世」との折り合いをつけようと思ってました。そういう共通点もあって、私は1人じゃないんだって私自身も息がしやすくなった本です。
私が「よくわからない何か」に支配されて苦しくて辛(つら)かったときにこの本を読んでいたらどれだけ楽になっただろう。だからきっと私の他にもこの本を読んで救われる人がきっといると思います。こういう本を作ってくれてありがとうございます。
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生きのびるブックス・2090円。23年4月刊。10刷1万3500部。著者は小説や短歌、インタビューなどを執筆。担当者は「辛いときに開くお守りのような本として大切に読まれている。20~30代から『救われた』との感想が聞かれる」。=朝日新聞2025年11月15日掲載