ISBN: 9784409511091
発売⽇: 2025/10/31
サイズ: 15.3×21.4cm/530p
「枢軸」 [著]ダニエル・ヘディンガー
枢軸。なんと重い響きだろう。本来はごく一般的な言葉だが、やはり日独伊三国同盟の枢軸を思い出してしまう。欧州の人びとも「アクシス」と聞けば、間違いなくあのヒトラーやムソリーニの悪夢を思い起こすはずだ。
本書によれば、第1次世界大戦の勝敗に関わりなく日独伊は似通っていた。いずれも列強の中では後塵(こうじん)を拝する後発国だが、近代化の成功による自信は揺るぎなく、大戦後の国際秩序への対抗心も強固。互いに意識しあう存在となっていた。
本書は、ベルリン・ローマ枢軸の研究に顕著な西洋中心主義を克服している。日本語史料も渉猟し、ベルリン・ローマ・東京枢軸を均等に扱うのだ。条約や首脳会談などの公文書だけでなく、展覧会・旅行・日記などの日常史料も検証し、枢軸を社会・文化の回路として捉えているのも印象的だ。
そうした本書の注目すべき主張は4点。①日独伊は、互いを必要とし、観察し、学び、刺激しあって急進化。②国内の政治や文化に根差しつつも、対外的には膨張するというグローカルなファシズムを確立。③1932年の満洲国建国や33年の国際連盟脱退など日本の行動モデルは独伊に強く影響し、独の連盟脱退や伊のエチオピア侵攻といった領土拡張を伴う「帝国的連結」を助長した。それゆえに、④枢軸による東経70度の世界分割は場当たり的な夢というより、既存の国際秩序に挑戦しようとする思想・実践として、一時、現実味を帯びた。つまり、日独伊枢軸は、互いの利害と野心を刺激し鼓舞しあうことで、ファシズムを国際的に連結させた装置なのであった。
回想・日記の検証やファシズムの定義に不明な部分もあるが、それを差し引いてもなお本書の意義は大きい。現在は戦間期に酷似していると言われるように、本書の描く「相互に刺激しあう過激化」は他人事とは思えない。昨今の日伊首脳の接近が枢軸の再来でないことを願うばかりだ。
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Daniel Hedinger 独ライプチヒ大グローバル動態研究センター研究員。東アジアと欧州の近現代史を幅広く研究。