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WBC敗退、日本はBASEBALLをすべきなのか? 「菜根譚」が説く、教わる側の覚悟 中江有里

(Photo by Ari Hatsuzawa)

 2月21日、沖縄県北谷町のAgreスタジアム北谷で今季初のオープン戦を観戦した。
 今季一番警戒している中日ドラゴンズとの一戦は1-1の引き分け。
 髙橋遥人、才木、伊藤将司、伊原、湯浅という投手リレー、大山悠輔選手は3打数3安打で個人的には満足した。
 この時、我がタイガースの3番、4番、そして正捕手は不在だった。

 そう、不在の3人は「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」に日本代表として集結していた。

 結果はご存じの通り。2023年のWBC覇者だった日本は、残念ながら連覇ならず。
 ちなみに前回のWBCの時、私は野球を観始めて1年目だった。タイガース沼にどっぷりハマってから観るWBCは、以前にはわからなかった面白さと深さがあった。
 まだ気持ちは吹っ切れないが、あらためてWBCをふりかえってみたい。

 

 WBCは、普段私が見ている日本のプロ野球(特にセ・リーグ)と違うものだった。

 思いつくままに挙げてみると、まずピッチクロック(投球間隔の時間制限)にピッチコム(バッテリーでサインを交換するための機器)の採用。日本はファームでピッチクロックを実験的に取り入れているが、厳密ではない。
 牽制球の制限。たとえば一塁走者に対し、投手が3回牽制してアウトに出来なかったら、自動的に進塁する。

 メジャー仕様のボール。そもそも慣れていないボールを使う時点で日本代表は不利だ。
 大会が終われば、日本の公式ボールに戻るので、投手の負担は大きい。
 そして投手には投球数制限がある。

 細かいことを言えばDH制(日本はパ・リーグのみ採用。セリーグは2027年から)。
 延長戦はタイブレーク(近年、日本の高校野球でも採用されている)。

 一部はメジャーリーグでも取り入れられているルールだが、特に投手に対するものが多い。これは投手の故障を防ぐためのWBC独自のルールだそう。

 全体としてホームランがバンバン飛び出し、あっという間に試合がひっくり返るダイナミックな展開が多かった。

 これがBASEBALLか。力と力のぶつかり合いに圧倒された。

 WBCで3度優勝、2度ベスト4だった日本。今回はベスト8。
 この成績はこれからいろんな形で分析されるだろうけど、メジャーリーガーがこれまで最多の7人だった今チーム。実力は十分のはずだった。
 この結果は日本野球とBASEBALLの違いなのか?
 日本はBASEBALLをするべきなのか?

「菜根譚」とは約400年前に中国の洪自誠によって書かれた本。
 儒教、道教、仏教の思想を取り入れたもので、日本でも長く読み継がれている古典。野口定男氏が独自に編集し、かみ砕いで説いた『世俗の価値を越えて 菜根譚』は時折読み返す一冊。

 野口氏は1962年に東京六大学野球連盟理事、75年には第4回日米大学野球選手権大会の役員を務めるなど、野球との縁が深い。

 本書に「教えること、教わることのむつかしさ」を説いた一節がある。
 野球に限らずスポーツの技術は、頭で理解しても身に付かず、体で習得しなければならない。
 そこで教える側は「うまくなってほしい」という純粋な気持ちで厳しく接する。
 教わる側は「やらされている」と思うことなく、師の厳しさを受け止めて鍛錬する。
 教えること、教わることはありふれた行為だが、実は互いの覚悟が必要なことで、厳しさは不可欠だ。

 再びWBCの日本敗退について思う。

 結論として次のWBCを勝つために、日本はBASEBALLを学んだ方がいいのだろう。
 ただし教えてくれる師はいない。誰もライバルに塩を送りはしない。
 一説に「学ぶ」とは「真似る」ことから始まり、やがて技術や知識を得ていく、とある。
 やらされるのではなく、自分たちから取り入れていく。BASEBALLの厳しさを。勝つための技術と知識とルールを。
 そうすれば近い将来、日本なりのBASEBALLを習得できるはずだ。

 ところで我がタイガースの3選手は帰国した翌日、スタメンで試合に出ていた!
 ペナントレースにむけての調整? 時差ぼけ解消?
 ともかく早めに疲れを癒して、元気で1年よろしくお願いします。
 ペナントレースまであと少し!