少し前に登録したドラッグストアのアプリに「シニアの方におすすめ」と表示が出た。まだちょっと早いと思うけどなんで? と設定を確認してみたら、登録するときに生年を入れ間違えたらしい。
1673年。江戸時代である。入力したときに間違っていますと出てきてもよさそうなものだが、シニアどころか今年三五三歳になる。
生年月日は本人確認に使うから、たいていのサイトやアプリで一度登録すると変更不可になる。以前、タブレットを買い替えるときに下取りしてもらうつもりが、自分の生年月日を間違えて入力し、身分証明書と合わなかったことで買い取ってもらえなかったことがある。私自身の身分証明書はあるのに、と理不尽に思ったが仕組み上、仕方ない。
このアプリも、修正するには一度アカウントを削除してやり直さなければならないが、「江戸時代生まれの自分」の設定が不思議な気もしてまだそのままになっている。
1673年。ウィキペディアを見てみると、日本は万延元年ならぬ延宝元年、将軍は徳川家綱。現在の三越に連なる越後屋が開業している。中国は清の康熙帝の時代。フランスだとブルボン朝のルイ十四世。同じ年に生まれた著名人の項目には知っている名前は見つからず、この年に亡くなった著名人ではモリエールとダルタニャンはわかる。いずれにしろ、教科書で見たことあるなあ、というくらいの、具体的なイメージは浮かばない遠い昔で、なにか縁があるわけでもない。このアプリ上では私はそんな年生まれになっていると想像してみたが、すごくおもしろいというほどでもなく、ちょっと妙な心地くらいの感じである。
私は画面上で入力間違いをよくやってパスワードがわからなくなったりエラーで停止されたりしがちだ。目で見た情報と手の動きを連動させるのが苦手らしい。日々小さい手間が増えて積み重なっているので、間違えないでできる方法ができてほしいと願っている。=朝日新聞2026年5月20日掲載