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こうも読める 柴崎友香

 電子書籍を、音声朗読版ではなくスマホやタブレットの読み上げ機能を使ってときどき聴く。だいぶ自然になってきたとはいえ機械的な読み方なので、小説には向いていなくて、関心がある社会問題や歴史の入門書などに使っている。

 読み上げ機能は、やはり昨今話題のAI技術で文字を認識して音声にしているのだろうが、漢字を読み間違える。間違えるというよりは、不思議な読み方をする。

 噂(うわさ)には聞いていたが「大西洋」を「おおにしひろし」と読む。「おおにし」はまだしも「洋」を「ひろし」と読む方が難しい気がするが、なぜか毎回「おおにしひろし」である。「エリザベス一世」の「一世」は「かずよ」と読む。「エリザベス・かずよ」はペンネームなんかでありそうだ。そのあたりは間違えるのもなんとなくわかるが、「金持ち」を「きんもち」と言う。「金持ち」は「きん」のほうの「金」も持っているとは思う。

 読み上げ機能の技術は、私が使っているスマホを作ったアメリカの企業のもので、日本語に使うにはまだまだ難しいのだろう。考えてみれば「大西洋」を「たいせいよう」と読むか「おおにしひろし」と読むか、「金」を「かね」と読むか「きん」と読むか、はたまた「こん」と読むか、文字そのものからは判断できず、前後を参照するしかないのである。さらには「黄金」を「おうごん」と読むことも「こがね」と読むこともあり、それがどちらも間違いではない場合もある。そう考えると、普段文章を読むときにかなり複雑なことをやっているんだなあと思う。

 不思議な自動読み上げを聴いているだけでは意味がわからない箇所が頻出するので、画面で文章を表示しながら聴く。なぜわざわざそんなことをするのかというと、文章を書いたり読んだりする私の仕事が体を動かすことと相性が悪くて運動不足が宿命であり、なんとか脱却しようと体を動かしながら本を読むにはどうすればいいか試行錯誤しているからだが、道は遠い。=朝日新聞2026年6月17日掲載