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現代の我々を鋭く問い直す「バラバラな世界で共に生きる リチャード・ローティの哲学」 中村佑子の新書速報!

  1. 『バラバラな世界で共に生きる リチャード・ローティの哲学』 朱喜哲(ちゅひちょる)著 NHK出版新書 1023円
  2. 『鈴木大拙 世界の禅を生んだ男』 碧海寿広(おおみとしひろ)著 ちくま新書 1320円

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 リベラルこそが他者の言葉を拒否すると、昨今批判的に言われる。とくに連帯と言ったとき、自分と似ている人との紐帯(ちゅうたい)を自然に想定していないか。どこを信じて良いのか疑わしい人との連帯はあり得るか。(1)の、困難な課題に向き合うローティの哲学は、現代の我々を鋭く問い直す。ローティは人々にとって大切なのは、真理や結論に到達せんとする「議論」ではなく、目的のない「人類の会話」を途切れさせないことと説く。正しさを相対化する「リベラル・アイロニスト」が、受容や連帯を寿(ことほ)ぐという考えは、一見カジュアルなようでいて、深い倫理性を感じる。ローティが展開する公/私の区別、「バザール(開かれた市場)」と「クラブ(安心できる私的空間)」の比喩解説しかり、著者独自の解釈も大胆に加えながらローティ哲学がもつ現代性をたぐり寄せる手腕も見事だ。

 (2)は、禅を西洋に広めた鈴木大拙の全容を捉えるのに格好の一冊。悟りの体験が興味深い。肘(ひじ)は外に曲がらないという気づきから、「個人の意志の外側にある宿命」を受容する自由を発見し、進化論を仏教に接続するのだ。大拙は親鸞に依拠し人間性理解に重きを置いたが、だからこそZENは自己を探究するマインドフルネスに形を変え、西洋に広がったのだろう。しかし本書で言及される梅原猛の批判も考慮すれば、人間もその一部である自然の中にこそ宗教性を捉える方向もあり得た。大拙という人を好悪も含め書き切った大作だ。=朝日新聞2026年6月13日掲載