ISBN: 9784761529680
発売⽇: 2026/04/05
サイズ: 18.8×2cm/224p
「準公共をデザインする」 [編著]矢島進二
「準公共」という言葉が、官庁などで使われ始めている。公と私が重なり合う領域を指すという。本書は、公園や施設や通りなど、準公共の場を生み出している10事例を取材したものだ。
各プロジェクトを主導する人々へのインタビューが軸になっていることが、本書に特色をもたらしている。絵空事ではなく、実際に事業を立ち上げて試行錯誤してきた当事者の声だからこそ、その発言には確かな重みがある。
たとえば、準公共をデザインするといっても、デザインは障壁となって特定の人を排除しがちだという。「デザイン臭がするものは、デザインのことがわかる人たちだけのものという排他的な感じがして、広く一般の人には届かない」というのだ。また、「ターゲット」や「マーケティング」という考え方が日本では過度に浸透しているという指摘もあった。
肝心なのは、多様な市民が立ち寄り、関わり合い、支え合う場が生まれることであって、デザインはあくまでもそのきっかけをつくるものでなければならない。本書では、そうしたデザインの具体的な方向性として、生活空間を区切る境界線を曖昧(あいまい)にするという点に着目し、そのいくつかを掘り下げている。
「準公共と聞いて感じたのは、『官のおごり』です」という手厳しい発言が紹介されているのも信頼できる。日本では多くの場合、公共的なことがらは官(行政)が差配し、市民はその「サービス」を受ける消費者と化している。しかし本来、公共とは官のみの領分ではなく、市民も一緒に担うもののはずだ。つまり、いま「準公共」と呼ばれ始めているものこそ、本当は「公共」それ自体であるはずなのだ。
市民がまちと主体的につながり直し、互いに関係をつなぎ直すために、変えるべき点はどこにあるのか。何に目を向けるべきなのか。本書には、そのための重要なヒントが詰まっている。
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やじま・しんじ 1962年生まれ。日本デザイン振興会常務理事。本書には交流施設などに携わる18人が登場する。