ISBN: 9784492444917
発売⽇: 2026/03/25
サイズ: 18.8×2.2cm/360p
ISBN: 9784409241776
発売⽇: 2026/02/26
サイズ: 13.2×18.8cm/366p
「暴政株式会社」 [著]ソーラブ・アマーリ/「反メリトクラシー」 [著]ジョー・リトラー
「リベラル」と「保守」は近現代を代表する対立的なイデオロギーである。急進的な社会変革を目指す自由派や革命派に対して、伝統や慣習の破壊を危惧する伝統派。両者は19~20世紀にそれぞれ、リベラル派・保守派として名指されるようになる。
時は流れて現在。新自由主義という共通の「敵」を前にして、図らずも両者が似た地平に立っている。この2冊を並べて読む醍醐(だいご)味はまさにここにある。現代の混沌(こんとん)とした思想状況や歴史認識を読み解く際の重要なポイントになるだろう。
両者の共通点は二つある。一つは、新自由主義が掲げる「頑張れば成功できる(メリトクラシー=能力主義)」や「労使は対等なパートナー(契約の自由)」という前提を茶番として一刀両断する点だ。『暴政株式会社』を著した保守派のアマーリによれば、現代の労働契約は対等ではない。それは、大企業や資本家が労働者を圧迫し、強制的に従わせる「私的暴政」に他ならない。一方、『反メリトクラシー』を執筆したリベラルのリトラーによれば、メリトクラシーは、構造的な不平等(階級、人種、ジェンダー)を隠蔽(いんぺい)し、敗者に自業自得と思わせるためのイデオロギー。新自由主義は、勝ち組の成功を「実力」と呼び、負け組には残酷にも「自己責任」のレッテルを貼り続ける。つまり両著とも、新自由主義の本質を、強者が弱者を支配するための偽装に過ぎないと喝破するのだ。
第2の共通点は、双方が新自由主義による人格的搾取を拒絶する点である。前者は、企業が自由な契約という名のもとに、家庭や休息を侵食し、伝統的な生活基盤が破壊されると危惧する。他方で後者は、新自由主義は、人びとに、自分自身が常に商品であることを強いるという。リベラルが警告する人間個人の市場化・商品化が、保守が懸念する家庭・生活の破壊と見事に符合しているのかもしれない。
本来、家父長制の解体を求めるリトラーの主張と、伝統的家族の保護を求めるアマーリの主張は交わるはずがない。だが、上記の共鳴からは、両者が経済効率などより、人間の尊厳に重きを置いていることが一目瞭然だ。
両者が同じ結論に至る背景には、まさにこの視点が存在する。つまり、人間を市場原理主義のちっぽけな商品か部品にしか見ない新自由主義に対して、両者が最大限の包囲網を敷いているということではないか。リベラルと保守が市場の暴走を止めようと共闘するほど、私たちは、深刻な時代に生きているのかもしれない。
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Sohrab Ahmari 85年、テヘラン生まれ。のちに米国に移住。オンライン誌「コンパクト」の創設者兼編集者▽Jo Littler ロンドン大ゴールドスミス校教授。社会学者、文化理論家。共著に『ケア宣言』など。
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「暴政株式会社」は会田弘継・解説、寺下滝郎訳。「反メリトクラシー」は河野真太郎訳。