ISBN: 9784492444948
発売⽇: 2026/07/15
サイズ: 21×2.7cm/600p
「Empire of AI」 [著]カレン・ハオ
AI(人工知能)開発がますます熱を帯び、多くの人びとを惹(ひ)きつけている。同時に、少数のテック企業によるAGI(汎用〈はんよう〉人工知能)の追求が、人間や社会に危険な影響を与えるとの懸念も高まっている。オープンAIによるChatGPTの公開は、紛れもなくこの状況を加速させた。
本書は、主にオープンAIに焦点を当てつつ、それをプリズムに、世界に影響を及ぼすAI業界の権力を明るみに出し、批判的に論じた作品だ。
この業界に精通する著者は、関係者への膨大な取材をもとに、非営利から営利企業への転換、CEO(最高経営責任者)サム・アルトマンの解任劇などオープンAIの内情を暴き、アルトマンと同社がいかに規模と力の拡大へと舵(かじ)を切っていったのかを描き出す。
だが、より重要なのは、AI業界の勢力拡大が帝国そのものだという著者の洞察にあるだろう。インターネット上の膨大な情報からの抽出はもちろん、生成AIの開発に必要なデータのラベル付けのため、アフリカや南米の労働者を驚くべき低賃金で搾取する。また日本でも近年、投資の対象として注目されているデータセンターは各地で土地や電力、水を膨大に消費する。さらに巨大企業は秘密主義と透明性の欠如に特徴づけられ、内部では、開発の名の下、安全性の追求が後回しにされている。
とはいえ著者は、AIそのものに反対しているわけではない。エピローグでは、少数言語を復興させる取り組みなどオルタナティブなAIの実践を紹介する。その上で、帝国とは対照的に、同意、互恵性、関与する人びとの主権にもとづくAIの実現を目指し、権力の再分配を訴えるのだ。
AI開発に乗り遅れたという焦燥感に地政学的な関心が結びつき、その開発と投資にのめり込みつつある今日の日本にとっても、AI業界の実態を詳(つまび)らかにする本書は、冷静な判断のための素材を与えてくれるだろう。
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Karen Hao 作家、ジャーナリスト。米科学技術誌「MITテクノロジーレビュー」のシニアAIエディターを務めた。
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長谷川圭訳