「いろいろいっぱい ちきゅうのさまざまないきもの」
都会に暮らしていると、この地球は人間が治めているという錯覚に陥ってしまう。でも、実際は違う。この惑星には数え切れないほど多様な生き物が暮らしていて、それぞれがたがいにつながって一つの美しい模様をつくっているのだ。だから、ある生き物が絶滅するということは、そこにつながっている生物にとっても問題だということ。人間もその美しい模様の一部なのだから、壊さないで大事にしていかないとね。シンプルな絵本だが、読み進むうちにそんなことが伝わってくる。なにより絵がすばらしいし、文字が大小二種類あるので、小さい子になら、大きい文字だけ読んであげてもいい。(翻訳家 さくまゆみこ)
★N・デイビス文、E・サットン絵、越智典子訳、ゴブリン書房、税抜き1500円、6歳から
「ドームがたり」
100年以上広島を見続けてきた「ドーム」が自身の言葉で語る歴史と現在。原爆が投下され壊滅状態になった広島も、今この世界で生まれている「次の原爆になりうるもの」のことも、ドームはずっと見続けている。平和って何かなんて簡単に言えない。でもドームの声にしっかりと耳を傾けて感じてみて欲しい。(丸善丸の内本店児童書担当 兼森理恵)
★A・ビナード作、スズキコージ画、玉川大学出版部、税抜き1600円、小学校中学年から
「僕は上手にしゃべれない」
吃音(きつおん)で悩んでいる人を理解してほしいという作者の願いが込められた物語。中学校へ入学した日、自己紹介がうまくできなくて落ち込んでいた主人公は「しゃべることが苦手な人でも大歓迎」というチラシを見て放送部に入る。そこで先輩や級友に助けられながら自分の世界を広げる第一歩をふみ出す。(ちいさいおうち書店店長 越高一夫)
★椎野直弥作、ポプラ社、税抜き1500円、中学生から=朝日新聞2017年4月29日掲載