大島真寿美「空に牡丹」書評 花火に情熱つぎこんだ男
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2015年11月01日
空に牡丹
著者:大島 真寿美
出版社:小学館
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784093864190
発売⽇: 2015/09/24
サイズ: 20cm/255p
空に牡丹 [著]大島真寿美
「偉人でも賢人でもない」のに、一族の者が集まると彼のことを話さずにはいられない、という「ご先祖さま」を描いた一代記。丹賀宇多(にかうだ)村の名家の次男として生まれた静助さん。花火に情熱と資金をつぎこみ、大半の田んぼさえ手放してしまう。
静助さんは、気が向くと丹賀宇多川に行き、まとまった数の花火を打ち上げていた。だから村の住民は知らぬ間に目が肥えてしまい、東京で隅田川の花火を見物しても「こんな花火なら、丹賀宇多でいくらでも見られるわい」と感激もしなかったという。亡くなった家族をしのぶため、花火を上げた静助さんが「これでもう、じゅうぶん」とそのすがすがしさ、はかなさに感じ入る場面が美しい。
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小学館・1620円