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生と死、爽やかに軽々と突き破る

『魔法はつづく』 [著]オガツカヅオ

 街はコンクリートに埋め尽くされ、かつて心霊スポットだった郊外にも工場やマンションが立ち並ぶ。あらゆる超常現象は科学的にも立証され、まるで陽炎(かげろう)のように遠ざかってしまった。そんな時代にあっても、我々を驚かせる不思議がふと立ち現れることがある。例えば、この世を去った身内による夢を介しての伝言。その時、去来するのは現前で起きていることに対する違和感ではなく、切ないような温かいような感情ではないだろうか。本作は、そんな共生感覚に浸れる怪異短篇(たんぺん)集だ。
 「はじめましてロビンソン」には、ある事故がきっかけで少しずつ身体が透けていく病気になってしまった夫と妻が描かれる。「猫のような」に登場するタツトのおばあちゃんは、入院中にもかかわらず、今居ない場所をまるで見てきたかのように話す。
 ある人の強い想(おも)いが波紋のように周囲を揺り動かし、生と死という限定的な世界を軽々と突き破る展開がたまらない。流れるような場面転換や巧みなミスディレクションも気持ちよく、怪異を扱いながら読み味は爽やか。最後まで読むと、改めてカバー絵の意味が立ちあがってくる構成もいい。かくて、読み手は魔法にかけられる。=朝日新聞2018年8月4日掲載