年始といえば、お笑い芸人たちのネタ番組。お笑いのステージだけでなく、さまざまな舞台で多才ぶりを発揮している彼らは、出版界でもベストセラーを生み出し、受賞レースを勝ち抜いています。オードリー・若林正恭さん『ナナメの夕暮れ』、山田ルイ53世さん『一発屋芸人列伝』など、ここ1年の話題作を一気にご紹介します。
オードリー・若林正恭さん「ナナメの夕暮れ」
「ずっと続けてきた自分探しの集大成」として、2015年から約3年間の日常をつづった本作を発表した若林さん。なぜ生きづらいのかを考え、答えを手繰り寄せてゆく中で「他人への否定的な目線は自分に返ってきて、自分の人生の楽しみ方を奪ってしまう」ことに気づいたと言います。17年に発表したエッセー『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』が昨年、旅にかかわる優れた著作に贈られる斎藤茂太賞を受賞するなど、今後の執筆活動にますます注目が集まりそうです。
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松原タニシさん「事故物件怪談 恐い間取り」
「事故物件住みます芸人」の松原タニシさんは、殺人事件が起こったり、薬の過剰摂取で亡くなったり、住人が仏壇のとってで首を吊ったりしたいわくつきの部屋に次々と転居します。そこで体験した不思議な出来事をつづった初の単行本。各話の冒頭に書かれた「一見どこにでもありそうな間取り」にリアリティーがあり、「隣室かもしれない」恐怖を刺激します。
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髭男爵・山田ルイ53世さん「一発屋芸人列伝」
レイザーラモンHGにコウメ太夫、テツandトモ、波田陽区……。「一発屋」と呼ばれる芸人たちの知られざる過去と現在に迫った一冊。書いたのは自らも「ルネッサーンス!」で一世を風靡した山田ルイ53世さんです。本から伝わってくるのは「負けを飲み込んだ人の強さ」。「メディアは『みんなキラキラしようぜ、頑張ろうぜ』って言うけれど、僕はこういう生々しいほうが好きやなと思います」と山田さんは話します。編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞作品賞受賞。
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インパルス・板倉俊之さん「月の炎」
板倉俊之さんの4冊目となる小説。消防士の父が殉職した過去を持つ小学5年生の弦太は、仲間とともに地元で起きた連続放火事件の犯人探しを始めます。しかし、事件を追ううちに彼らの前に現れたのは、言葉を失うような結末で――。バイオレンスの香りに満ちていた過去作から一転、少年を主人公にしたハートウォーミングなミステリーです。
南海キャンディーズ・山里亮太さん「天才はあきらめた」
思いついたネタや、つらかったことを長年書きためた100冊に及ぶノートを元に、自分自身と戦った日々をつづった山ちゃんのエッセーです。「陰口言ってる奴(やつ)らを恨む時間は死ぬ程ムダ!!あいつらのウイニングランになるだけ」など自らを奮い立たせる言葉がある一方、相方・しずちゃんへのかつての嫉妬も赤裸々に明かしています。2006年に出版した『天才になりたい』の文庫化ですが、「ほぼ全てを書き直した」という本作。執念深さや自身の心の闇を隠さずに加筆したことが共感をよび、発売1カ月で7万部というヒット作になっています。
南海キャンディーズ・山崎静代さん「このおに」
テレビ番組で絵の才能を開花させているしずちゃんが、絵と文を手がけた絵本です。題材に選んだのは、五輪出場を目指していたボクサー時代の恩師・梅津正彦さん(故人)。出会った瞬間から始まった地獄の特訓、押し寄せる葛藤、沸き起こる愛憎、そして別れ……。激しく揺れる感情を、迫力の筆致で描いた力作です。
オアシズ・光浦靖子さん「ハタからみると、凪(なぎ)日記」
毎年律義に花を咲かせたベランダのシクラメンのこと、カーテンづくりに没頭した夜のこと、「武士でいう刀」だというトレードマークの眼鏡を楽屋に忘れて焦った時のこと……。日常のたわいもない出来事から、自分の内面を見つめて考えたことまでを、48の文章におさめています。最後の48本目のタイトルは「めちゃイケ」。昨春に放送を終えたバラエティー番組への思いがたっぷりと込められています。
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石井正則さん「駄カメラ大百科 駄菓子のように懐かしく、お手頃に買えるカメラたち」
デジタル時代に「ジャンク品」として投げ売りされるフィルムカメラたちを「駄カメラ」と名付けて、こよなく愛する石井正則さん。初の著書では、自身が購入したユニークな25台を披露しています。デジカメが風景を「スキャンしている」イメージなら、フィルムは「旅先の光をそのまま持って帰るような感覚」と石井さんはその魅力を語ります。