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産業遺産の本質的な「美しさ」 岡田昌彰「美しい英国の産業景観(テクノスケープ)」

岡田昌彰著『美しい英国の産業景観(テクノスケープ)』から

 世に『美しい○○』と題した写真集は多いが、本書は「美しさ」を過剰演出せずに、橋や配水塔、発電所といった英国の産業遺産を淡々と捉えている。筆者・撮影者は景観工学の専門家なのだ。
 個々の遺産にはデザイン的な工夫のあるものも多い。でも、ルイスマーサー炭鉱の立坑巻き上げ機=写真=なんかを見ると、運ぶ、引き上げるといった機能を支える構成自体が見事なのだと気づく。注がれた客観的な視線が、本質的な「美しさ」を浮上させている。(大西若人)=朝日新聞2019年1月19日掲載