冒頭、世界に関する13の質問が登場する。「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」。20%、40%、60%の3択から評者は20%を選んだ。正解は60%。公衆衛生学の研究者である著者らが行った調査では正解率は7%だった。他の質問も正解率は低い。
勘違いするのは、悲観的に見ようとする「ドラマチックすぎる世界の見方」が人間の「本能」として脳に組み込まれているからだという。
その本能を、「世界は分断されている」と思い込む「分断本能」、「世界はどんどん悪くなっている」と思い込む「ネガティブ本能」等々に類型化。勘違いを排し、正しく判断するよう、「事実に基づく世界の見方」、ファクトフルネスを習慣づける方法を示す。
例えば、低所得国に住むのは世界の人口の9%で、75%は中所得国に住むという事実は、既存の世界観の書き換えを余儀なくさせる。
メディアの責任も問う。「あなたに気づいてもらうために、ドラマチックな話を伝えようとする」と。メディアとかかわりのある評者も自戒。
「この本を読み終えたら」「心が軽くなり」「希望が持てるようになるはず」との記述に納得した。=朝日新聞2019年2月2日掲載
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