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中原昌也「虐殺ソングブックremix」 作家性際立つ小説リミックス

 『虐殺ソングブックremix』(河出書房新社・2592円)は、中原昌也さんの小説や日記を元に、作家やミュージシャンら10人が新たに作りだした文章を収めている不思議な本だ。
 リミックスとは、楽曲の再編集や再構築を指す音楽用語。柴崎友香さんは中原作品に自身の小説の文章を織り込んだり自分の言葉で書きかえたり。朝吹真理子さんはこの企画に関するエッセーに中原さんの小説の言い回しや描写が出現する。町田康さんの場合は、中原さんの「待望の短篇は忘却の彼方(かなた)に」を翻案して町田節になっている。
 編集者の岩本太一さんによると、作家デビュー20年に合わせて中原さんに選集刊行を提案したところ、「リミックス」のアイデアが出されたという。既存の文章や紋切り型の言い回しを再構成しながら独創的な作品を生んできた中原さんだけに、自身の作家性、文学性にもつながる再構築になった。(滝沢文那)=朝日新聞2019年6月15日掲載