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「地中海の十字路=シチリアの歴史」書評 まさに世界史を映す島

評者: 出口治明 / 朝⽇新聞掲載:2019年07月20日
地中海の十字路=シチリアの歴史 (講談社選書メチエ) 著者:藤澤房俊 出版社:講談社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784065163283
発売⽇: 2019/06/12
サイズ: 19cm/261p

地中海の十字路=シチリアの歴史 [著]藤澤房俊

 地中海世界は一つの文明ではなく互いに層をなしている幾多の文明であり、その真ん中に位置するシチリアは文明の十字路と呼ばれてきた。本書はその3000年の歴史をたどる。
 まずフェニキア人が、次いでギリシア人がやってきた。ローマの征服がこれに続き、イスラーム教徒、ノルマン人とバトンが渡されルッジェーロ2世が12世紀半ばに王国を樹立する。シチリアは多様な民族・文化の調和を実現させ最盛期を迎えた。この後にドイツの「世界の驚異」フェデリーコ2世の時代がおとずれる。フランスの支配が「シチリアの晩禱(ばんとう)」事件で崩れるとスペインの支配が始まり、シチリアは長い眠りにつく。そしてガリバルディが上陸しイタリアの統一へ。マフィアの淵源やアメリカ移民、映画化された小説『山猫』の世界など、シチリアの全てを網羅して読者を飽きさせない。現在は難民が押し寄せるシチリア。まさに世界史を映す島だ。