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「ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた」 「マンハント」と「新青年」を比較

評者: いとうせいこう / 朝⽇新聞掲載:2019年09月07日
ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた。 著者:鏡 明 出版社:フリースタイル ジャンル:本・読書・出版・全集

価格:2376円
ISBN: 9784939138966
発売⽇: 2019/07/15
サイズ: 20cm/378p 図版16p

この雑誌がなかったら、いまのぼくはなかった−。著者が少年のときに出会った雑誌『マンハント』を通して、ポピュラー・カルチャーとは何かを考える。『フリースタイル』連載を改題し…

ずっとこの雑誌のことを書こうと思っていた [著]鏡明

 「マンハント」という雑誌があったという。同名の米国ミステリー雑誌の日本版で1958年から63年までのこと。評者自身、この刊行物をまるで知らなかった。不明を恥じるのみである。
 著者はこの雑誌の歴史的な意義を大正時代の「新青年」と比較し、ピンナップというお色気が入ったこと、コラムを充実させたこと、書き手の文体を画期的な〝C調〟にしたことなどで、のちのサブカルチャーに大きな影響を与えた流れを解き明かしていく。
 本の初めから終わりまで、著者の「マンハント」愛、ひいては雑誌愛があふれている。中に「思い出話には、しない」という宣言のごときものがあるが、雑誌の時代がかつてあったことは確かで、著者はそれが完全に過ぎ去ったとは言いたくないのだ、きっと。
 だからこの緻密で気軽なスタイルで、忘れられた雑誌のありようを書き残す。
 来たるべき新しいメディアのためにも。もしそんなものがありはしなくても。