米国の軍事アナリストが、急速に進化する次世代ロボット兵器を解説する。一昔前ならSFだが、今や実戦で使われることも少なくない。2018年1月にはシリアの反政府勢力がドローン13機でロシア軍基地に攻撃を仕掛けると、ロシアも負けじとばかりに重武装の無人戦闘車両「ウラン―9」を戦地に投入した。
兵器技術の発達は戦場の人間性を奪う。米国の調査では、第2次世界大戦中に敵を狙い撃ちした陸軍兵士は僅か15~20%に過ぎず、ほとんどの兵士が敵の頭上に向けて撃つか、まったく発砲しなかった。人を殺すのが嫌だったからだ。一方、照準器で遠くの橋、工場、基地などの物理的目標を見た爆撃手は、人間は見なかった。このため都市を壊滅させ、何十万人もの民間人を殺した。
今後、自律型兵器を使用する人間が、殺人は兵器がやっているのだと感じるようになったら、倫理的責任が弱まり、殺人が増えるかもしれないと著者は述べる。
所々に興味深い逸話を載せているが、全体的には先端軍事技術に関する専門書の趣だ。570ページを超える大部もあいまって、通読には若干忍耐を要することを最後にお断りしておこう。=朝日新聞2019年9月21日掲載