人類滅亡後の地球を、高い知能を持つナメクジが支配する――。手塚治虫「火の鳥」の「未来編」は、今も強く記憶に残っている。
児童書版として復活した、伝説の書に登場するのも、人類滅亡から5000万年後の地球にいるであろう動物たちだ。荒唐無稽にも映るが、自然が回復し、「進化の法則」も機能する想定で、根拠のある推測なのだという。
シカのようなウサギがいれば、よろいを持つハリネズミもいる。表紙には、前脚で歩き後ろ脚を手として使うコウモリが登場する。超音波を感知するため、耳と鼻が肥大化した。人類不在の世界を謳歌(おうか)し、大胆に進化したようにも見えるが、人類の破壊によって回復が遅い地帯があることも考慮されている。
原著は1981年。今回の本には新しい知見も生かされているというが、「人新世」なる呼称が生まれ、温暖化も日に日に深刻になる今、想定される生物の姿も変わるのではないか。まさか、ナメクジではないだろうが。=朝日新聞2019年9月21日掲載
編集部一押し!
- イベント 「今村翔吾×山崎怜奈の言って聞かせて」公開収録に、「ツミデミック」一穂ミチさんが登場! 現代小説×歴史小説 2人の直木賞作家が見たパンデミックとは PR by 光文社
- インタビュー 寺地はるなさん「雫」インタビュー 中学の同級生4人の30年間を書いて見つけた「大人って自由」 PR by NHK出版
- トピック 【直筆サイン入り】待望のシリーズ第2巻「誰が勇者を殺したか 預言の章」好書好日メルマガ読者5名様にプレゼント PR by KADOKAWA
- 結城真一郎さん「難問の多い料理店」インタビュー ゴーストレストランで探偵業、「ひょっとしたら本当にあるかも」 PR by 集英社
- インタビュー 読みきかせで注意すべき著作権のポイントは? 絵本作家の上野与志さんインタビュー PR by 文字・活字文化推進機構
- インタビュー 崖っぷちボクサーの「狂気の挑戦」を切り取った9カ月 「一八〇秒の熱量」山本草介さん×米澤重隆さん対談 PR by 双葉社