人類滅亡後の地球を、高い知能を持つナメクジが支配する――。手塚治虫「火の鳥」の「未来編」は、今も強く記憶に残っている。
児童書版として復活した、伝説の書に登場するのも、人類滅亡から5000万年後の地球にいるであろう動物たちだ。荒唐無稽にも映るが、自然が回復し、「進化の法則」も機能する想定で、根拠のある推測なのだという。
シカのようなウサギがいれば、よろいを持つハリネズミもいる。表紙には、前脚で歩き後ろ脚を手として使うコウモリが登場する。超音波を感知するため、耳と鼻が肥大化した。人類不在の世界を謳歌(おうか)し、大胆に進化したようにも見えるが、人類の破壊によって回復が遅い地帯があることも考慮されている。
原著は1981年。今回の本には新しい知見も生かされているというが、「人新世」なる呼称が生まれ、温暖化も日に日に深刻になる今、想定される生物の姿も変わるのではないか。まさか、ナメクジではないだろうが。=朝日新聞2019年9月21日掲載
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