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フルポン村上の俳句修行 新年企画でシニカルに恋して笑って、新春ごあいさつ句会!

 2020年といえばオリンピックイヤーですが、俳句界では100万部売れる句集が出たり、俳人がモテたりする時代の到来を祈念して、おもしろい題で句会をすることにしました。岩田さんが季語、村上さんが字、黒岩さんがテーマで題を考えて、発表します。

黒岩:それではですね、俳人の阪西敦子さんも到着されたということで(パチパチ)、2020年を記念して新年句会をやってみたいと思います。それではお題の発表です。
岩田:季語の題は「初笑(はつわらい)」。
村上:むずー! (字の題は)恋もいいなと思ってたんですけど、唇と恋、どっちがいいかな? 「恋」にしましょう!
黒岩:テーマ詠は「あいさつ」。あいさつっぽい俳句やったら何でも構いません。

 ここから10分で、それぞれ作句に集中します。「あいさつ」に思いのほか苦戦する村上さん。「はい、もうすいません。無理で」とあきらめかけると、阪西さんが「大丈夫、大丈夫」。「9回ツーアウトからが俳句です」と黒岩さんも励まします。3句ずつ、計12句が出そろったところで、短冊を回して選句しました。自分以外の句ならいくつ選んでもいい、というルールです。

黒岩:点数が高い順に並べていきます。3点(=作者以外の全員が選んだ句)ありましたよ。楽しいですね。気分は新年ですよ、これで。
村上:これくらいスピーディーだと意外といいですね。いつも人数多いから。
阪西:負担ないですよね。
村上:責任感もないしね。

この日、満点の3点句を作ったのは・・・

黒岩:3点句が2句ありました。「初詣にて校長の後頭部」。敦子さんいかがでしょう。
阪西:すでに景色がおかしいんだけど、「あいさつ」っていう題でこれが出てきたんですよね。恋じゃないよね? それもあいさつだなっていうのが尚おかしい。
村上:学校の先生に学校じゃないところで会うおもしろさと変な感じってあるじゃないですか。「サザエさん」とかであるじゃないですか、先生と初詣とかお祭りで会うみたいな。その先生の出し方が、校長っていうのもいいし後頭部っていうのもいいしっていう。
黒岩:校長と後頭部で韻を踏んでるのも楽しいし、「にて」がちょっとかしこまってますね。どなたでしょう。
岩田:岩田です。

黒岩:続きまして3点句、もう1句ありました。「恋すてふ人の賀状を裏返す」。敦子さん、村上さん、黒岩が取ってます。誰が作ったかも分かる。でもまだ名告(の)らない!
村上:なるほどなと思って。年賀状を裏返す、抵抗、それをしたところでなんにもならないのに、なんにもならないっていうことが恋なんだっていうのは、合ってるなって思いました。
黒岩:今日イチでうれしそうな・・・・・・(笑)。
村上:恋をしてる人間の動作のひとつとしておもしろいですよね。
阪西:「恋すてふ」っていうのは自分が好きとか関係なくて、その人が恋してるんだよって話?なので同性の友だちかもしれなくて、そんなもん年賀状に書いてこないで直接言いなさいよ、って感じもあるんですけど、先越されたというか、なんなんだよって感じがいいですね。恋どうしようかなって思ったんですけど、こんな手が。
村上:恋はみんな義務で作るべきだと思います、俳人の人たちは。
阪西:お正月には恋。
黒岩:どなたでしょう。
岩田:岩田です。

続く2点は「恋」の俳句でした

黒岩:2点はいろいろあります。これおもしろかったですね。「セーターを伸ばして笑う恋人ら」。これを正月の俳句だと思って読むと、初詣に一緒に行って、なんか楽しそうだなおまえら、っていう。簡単な今風で言うと「リア充爆発しろ」。「恋人ら」って言うとちょっとぶっきらぼうな感じがして、あんまり俳句で「ら」って使うととってつけた感があるんですけど、これはしっかり恋人が見えてきていいなと思いました。
阪西:やっぱり「ら」によって向こう側に置いてますよね。自分とは違う何か、みたいな。あっち側にいる何かっていう。気分いいとも悪いとも言ってないけど、あんまり気分がいいわけじゃないっていうのが言葉遣いの細かなところで出てきてるっていうのがおかしいです。ほんと苛つくっていう感じがありますよね。まっとうな恋の句、出てこなかったな。
一同:(爆笑)
黒岩:ちょっとシニカルな。どなたでしょう。
村上:村上です!

黒岩:恋敵にもなる歌留多仲間かな」。
村上:『ちはやふる』の世界ですよね。恋敵にもならないかもしれない何かの仲間なんてないですけど、当たり前のことなんです、たぶん。恋敵にならないような関係性の人はいないから。でもこうやって言われてしまうとおもしろいというか、歌留多というものの世界観も見えてくる。
岩田:「にもなる」っていうのがバカバカしくてよかったかな、っていう風に思いました。それこそ百人一首だったら恋の内容もあるでしょうし、まさに『ちはやふる』が現実のことになってしまったかのような感じというか。巡って争ってる人も歌留多仲間だといいですね。
黒岩:徳将でした。書いたあとに『ちはやふる』まんまだなって。めちゃくちゃ好きなんで、ついやってしまったかなと。

>「ちはやふる」末次由紀さんのインタビュー記事はこちら

1点句は物語性がある作品に

黒岩:1点句、いろいろあります。「分け前を決める山賊初笑い」。
岩田:めちゃくちゃでしょ(笑)。初笑で、まず山賊の新年の句を見たことがないし、分け前を決める時にガハハハって高笑いをするんでしょうね。新年に奪われた方もたまったもんじゃないと思いますけど、確かにフィクションの中では笑うけど、みたいな突っ込みどころを多分に残した感じっておもしろいなと思いましたね。
黒岩:ウソも入ってるかな、と思わせるところが逆にいい。よく俳句はプラスの感情とマイナスの感情そのまんまだったらおもしろくない、って話も聞くんですけど、新年っておめでたい気持ちだから、プラスにプラス重ねても結構おもしろいっていう。このガハハ感が。
阪西:ま、泥棒ですけどね。
村上:村上でーす。

黒岩:好きだつた人の不運も賀状受く」。
岩田:不運って何なんでしょうね。めちゃくちゃシニカルに取ったら、それこそ裏に写真とかあるじゃないですか。今の家族の写真で、「こんな人と結婚してたんだ」って感じにも読めるかなって。
村上:この「も」っていうのがどういうことだったのかな。
岩田:年賀状がたくさん配られてきて、その中に好きだった人からの年賀状もあって、っていう「も」。
村上:なるほどね。「離婚しました」ってのはないですよね、「子どもが生まれました」はあるけど。
黒岩:もうちょっと軽い・・・・・・去年は骨折とかしちゃったけど、みたいな。展開がいろいろありました。
阪西:敦子です。

 村上さんが最後まで悩んだ「あいさつ」の句は「あいさつをたぶんされてる店卸」。店卸しをしてるんだけど、その時に声をかけられても振り返る暇がないしその人を気にするつもりもないところが「ちょいひねくれです」(黒岩)。「店卸までいったのがすごかった、この10分で」(阪西)という評価でした。

新年句会を終えて

村上:楽しいもんですね。3句くらいでやるっていうのも意外と。
黒岩:そうですね、飲み会のついでにちょっとやるか、みたいなのもできるし。題がおもしろかったんじゃないですかね。恋が結構、良い句が出たのがおもしろかったですね。
村上:俺は絶対、みんな「恋」とか「君」とか遠ざけるけどやるべきだと思ってるんで。名句になるかどうかは別にして。人を詠むのってむずかしいじゃないですか。
阪西:つまんなくなりますからね。
村上:だいたいありきたりになるからこそ。
黒岩:でもシーンとかカットを変えれば無限にあるんだな、って感じもしますね。

村上さん、まとめてください

村上:お三方に集まっていただいて、(俳句は)堅苦しいものじゃなくて、ただただ楽しい、熱くなれるものだっていうことが改めて分かりましたので、俳句いいなと思いましたので、まだやってないよって方がいたら軽い気持ちでやってみてくださーい!

【句会のフルバージョンは動画でお楽しみくださーい!】