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「関東大震災と中国人虐殺事件」 公文書管理のずさんさ変わらず

 関東大震災が起きた1923(大正12)年9月1日。その翌日に戒厳令が布告された。数千人といわれる朝鮮人や、社会主義者、労働運動家らが、軍隊、警察、自警団などに殺された。そして、あまり知られていないが、数百人の中国人も東京府南葛飾郡大島(おおじま)町(現・江東区)で殺されている。

 3月9日に96歳で亡くなった今井清一氏の『関東大震災と中国人虐殺事件』はこの問題にしぼり、様々な史料や先行研究を踏まえ、多角的に考えた。日本の植民地支配下にあった朝鮮人と違い、中国人殺害は外交問題になるため、「政府中枢が中国政府や日本国内の諸勢力の動きにも配慮しながら」「徹底的に隠蔽(いんぺい)」したという。

 『昭和史』(共著)などで知られる歴史学者は、自らの編著『日本の百年 震災にゆらぐ』で取り組んだテーマを、60年近く追い続けた。6章のうち、2章を新たに書き下ろした本書の「あとがき」には、こう書いている。

 「公文書管理のずさんさは、九十余年前の関東大震災の当時から変わりがありません」(石田祐樹)=朝日新聞2020年4月4日掲載