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木南晴夏さん「キナミトパンノホン」インタビュー パンシェルジュの女優が語る「人生を楽しくしてくれるパン」

文:若林良、写真:『キナミトパンノホン』(講談社/講談社ビーシー)より
【パンシェルジュ検定2級 例題】
1960年代に登場し、給食で人気になった甘い調理パンは何か。
1.あんぱん
2.チョココロネ
3.揚げパン
4.ロールパン (正解はページ下で!)

パンがあるのは日常だった

 この取材が行われたのは、ちょうどコロナ禍による緊急事態宣言が発令され、誰もが自粛生活を強いられていた真っただ中でした。しかし、その中でも木南さんのパンへの探究は止まりません。「家で過ごす時間が多いので、普段はしないようなアレンジパンを作ってみたりしています。なかなか好きなパン屋さんに行けない日々が続いているので、お取り寄せにも興味を持ち始めました」

 さすがパン好き! もともと、木南さんがパンに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか。

 「母がパン工場からパンを配達する仕事をしていたことが大きかったと思います。母にいつも付いていっていたため、焼きたてのパンを工場のおじさんに分けてもらうこともありましたし、朝食は決まってパンでした。ですから、パンを好きになるのは自然でした」

 ただ、パン屋さん巡りに目覚めたのは、成人を迎える少し前だったとのこと。「16歳で上京して寮に入り、しばらくは自由に使えるお金もなかったので、パン屋さんに行く余裕はなかなかできませんでした。19歳で一人暮らしをはじめて、ようやく自分で好きなパンを買えるようになり、それからパン屋さん巡りが好きになりました」

食パンとトースト、それぞれの魅力

 そんな木南さんは、「全体的にシンプルなパンが好み」と語ります。たとえば、本の最初の章でも紹介される食パン。「甘すぎず、むぎゅっと噛みしめるとほんのり感じられるくらいの甘さ」の食パンがとくに“推し”で、高級食パンが流行ってからは、いろいろな店の食パンを食べ比べるという楽しみも増やしていきました。

 もともと食パンは生派だった木南さんですが、ある時喫茶店のトーストを食べてから、バターのおいしさに目覚め、それからは両方を楽しむようになりました。「トーストに向いてる食パン、生で食べるのに向いてる食パンと、種類によって違うので、お店のおすすめの食べ方で食べることが多いです。バターはトーストする前に乗せて、食べる前にも乗せて、あったかく溶けたバターと冷たいバターのふたつの味を楽しむのが好きです」

 家で食べるだけでなく、パンのために足を運び行動することで、「その場所」の思い出もまた増えていった木南さん。たとえば神奈川県藤沢市にある「POURQUOI?」という店では、SNS用に買ったパンの写真を撮ろうとした際、飛んできたトンビにパンをかっさらわれ、泣く泣くお店に買いに行った想い出が印象的だったと語ります。また、「ベーグルはここ、バゲットはここ」など種類によってお気に入りのお店は決まっており、その時の行動範囲に近いパン屋さんを選んでいくとも語りました。

 パンを求める旅は、日本のみに留まりません。「台湾で食べたパンには、すべてに甘い肉でんぶがかかっていてちょっと苦手でした(笑)」といった失敗談(?)もあるものの、パリでクロワッサンを食べた際には、「感激のあまり飛び上がっちゃうほどのおいしさ」を感じたそう。著書には、帰国後もそれに匹敵するクロワッサンを今も探し求めていることが熱量をもって書かれており、それだけ木南さんの、どこに行っても衰えないパンへの愛着を感じさせられます。

 そして場所の大切さという意味では、パン好きの人が集まる「パン部」の活動も欠かせません。「行ってみたいお店をみんなで巡ったり、誰かの家に集まってお気に入りのパンを持ち寄ったり。誕生日の時には、年の数だけパンを用意してくれてパンパーティを開いてくれました」。こうした活動から、パンはひとりでもおいしいけど、「みんなで食べるともっとおいしい」とあらためて実感したと語ります。

「パン好き」を検定で証明!?

 そんな木南さんは2017年、パンシェルジュ検定2級を取得しています。受検したのは、マネージャーさんからアドバイスを受けたことがきっかけでした。「パンが好きだと言っててもその程度が伝わらないから、なにか形で表せるものがあるといいんじゃないかと言われました」

 パンシェルジュ検定を受けてみて大きかったのは、パン以外のものからもパンを学べたことにあったと、木南さんは語ります。「パンのことだけでなく、パンに合うコーヒーや紅茶、ワインの勉強などもしなくてはいけなかったので、知識は確かに深まりました」

【正解】冒頭の問題の正解は「3.揚げパン」

 『キナミトパンノホン』にも、木南さんのプロフィール欄に「パンシェルジュ検定2級」を取得したことが記載されており、それだけ達成感があったこともうかがえます。「2級もかなり大変でしたが、いずれは1級にも挑戦したいです」

 最後に、木南さんにとって、パンはどのような存在かを尋ねました。「人生を楽しくしてくれるものですね。あとは、パン好きということが知れ渡ってからは、現場でのコミュニケーションの一つにもなりました。オススメのパンを聞かれたり聞いたり。これからも自分のペースで、世界中の美味しいパンと出会っていきたいと思います」