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崩壊寸前の家族がついた優しい嘘 野尻克己『鈴木家の嘘』

著・野尻克己

 2018年に公開され、数々の映画賞を受賞した『鈴木家の嘘』。その快作を監督自ら小説化しました。

 3年前から引きこもっていた鈴木家の長男・浩一が自死します。第一発見者の母はこん睡状態となるものの、浩一の四十九日に突如目を覚まします。ショックが大きすぎて記憶を失った母に対して、家族がとっさに取った行動は「浩一はアルゼンチンで仕事をしている」という嘘。母に気付かれないために、バラバラだった家族は親戚を巻き込んで協力せざるをえません。その過程で、それぞれが浩一の死と向き合うことになります。

 重くて深いテーマを、著者はユーモラスなエピソードを交えて掘り下げます。細やかな心理描写は小説ならでは。引き込まれます。

定価:本体1600円+税 ポプラ社 03・5877・8101